久しぶりにスティグリッツが発言した。ユーロ圏内先進国の態度に腹を立てて、「もうおしまいだ!」とけつをまくってから半年以上経つ。

例によってきわめてクリアカット、快刀乱麻を断つの趣がある。共同債構想からさらに一歩踏み込んで、「共通財務省」構想を打ち出していることが目に付く。

つまり、共同債などあれこれの形態ではなく、各国政府が歳入を増やすことがもっとも肝心な目標だといっている。その観点から、スペイン支援対策をブードゥー経済学 と批判する

2012年06月11日

[ニューヨーク 10日 ロイター] ジョセフ・スティグリッツが欧州連合(EU)によるスペインの銀行救済のための資金支援計画について、記者とのインタビューに答えたもの。

YOUTUBEで、彼のインタビューの模様を見たことがあるが、記者会見というよりは学生が講義を受けているような雰囲気だ。記者たちが食い入るような目つきでメモを取っているのが印象的だった。

1.スペイン支援策はブードゥー経済学だ。機能しない

ユーロ圏財務相会合は9日、銀行問題に絡むスペイン支援で合意。インタビューはこれに先立って実施された。

スティグリッツは支援策を批判して次のように述べた。

スペイン銀行(中央銀行)の報告によると、2011年のスペイン新発国債の主な買い手は中銀を含むスペインの銀行だった。

「スペイン政府がスペインの銀行を救済し、スペインの銀行がスペイン政府を救済する」相互扶助だ。こんなものは機能しない。

「これはブードゥー経済学(呪術的経済学)だ。現在もこれからも機能しない」

2.共通の金融システム創設に向けた議論を加速させるべき

スティグリッツは、

欧州はスペイン支援よりも共通の金融システム創設に向けた議論を加速させるべきだ。

景気が下降しているいま、欧州共通の金融システム無しで成長回復に向けた政策を持続的に実行することは不可能だ

と述べた。

3.火に油を注ぎながら防火壁を設けても意味がない

スティグリッツは長年、財政緊縮策への批判を展開している。

EUがこれまで実施してきた緊縮策は成長を抑制し債務を増やすだけだ。

「火に油を注ぎながら防火壁を設けても意味がない。根源的な問題、つまり成長を促進するという問題を直視する必要がある」

4.ドイツが最大の保証コストを支払い、最大の財源を提供すべき

ユーロ圏 は財政統合に向けた抜本改革を進めるべきだ。

何らかの形でユーロ圏共同債が発行されなければならない。

そのためには、最も富裕なドイツが最大の保証コストを支払い、公共投資についても最大の財源を提供すべきだ。

「ドイツは財政規律こそが強化策だと言い続けているが、それは完全に間違った判断だ」

5.共同債のほかにも策はある。それは共通財務省だ

ユーロ圏共同債構想は、機能し得る制度の1つであり、唯一の解決策ではない。

ほかにも策はあり、それは共通財務省だ。

最終的には「弱小国の景気が悪化した際に支援できるよう、欧州全体で歳入を増やす手段を整えなければならない」

6.ドイツは理解しないかもしれない

「ドイツは、ユーロ圏 解体が引き起こす代償と、ユーロ圏を存続させるコストのどちらを支払うことを望むのか、という問いかけに向き合わなければならなくなる。

私の考えでは、 ユーロ圏崩壊の方が維持よりもコストが高くつく。

彼らがそのことを理解するよう期待しているが、理解しないかもしれない。

これは去年10月と同じ論調で、いまだスティグリッツはペシミズムから脱却してはいないようだ。