LIBOR問題は金融業界にとってかなり深刻なので、いろいろ解説も多い。まずは不正操作の手口から見ていく。

 LIBORと闇カルテル

LIBORは London InterBank Offered Rate の頭文字をとったもので、直訳すればロンドン銀行間貸し出し金利。

銀行間で短期資金をやり取りする際に、「うちはこの金利でお貸ししますよ」というもの。「付け値」だから、端的に言えばいくらでも良いことになる。

借り手市場であれば金利は安くなる。資金繰りが苦しくなれば金利は上がる。これは銀行間では当然だ。しかし最後の借り手は企業なり一般市民だ。銀行が闇取引を結んで金利を吊り上げれば、最終的に損をするのは企業と一般市民で、銀行は濡れ手に粟のぼろもうけだ。

これが、不正操作の基本パターン。毎日新聞に載った図は、これを示している。

https://livedoor.blogimg.jp/shosuzki/imgs/f/6/f6d2de1c.jpg 
LIBOR不正操作の全体像

リーマンショックまでの金利操作は大体この手のものだった。ところがリーマンショック後、資金繰りが行き詰るようになると、今度は貸し手市場になる。金利はどんどん上がる。

それではたまらないと、銀行は実勢より低い金利を出す。銀行といえども打ち出の小鎚ではないから、一般の投資家から金を集めることになる。そうすると今度は一般投資家が不当に鞘をとられて、損をかぶることになる。

これが第二のパターンだ。

この二つのパターンはいずれも一種のカルテルであり、好況カルテル、不況カルテルという亜種として考えられる。その旗振り役をしたのがバークレイズということになるのだろう。

LIBORとインサイダー取引

こちらは基本的にはバークレイズの単独犯。

バークレイズは総資産高で世界第2位の大銀行。銀行、投資銀行、証券業からクレジットカードまで扱っている。ボルカーがもっとも嫌いなタイプの銀行。もちろん自己勘定取引もバンバンやっている。

その自己勘定部門のデリバティブ・トレーダー14人が、LIBOR金利を提示する行員に対し金利操作を要求していた。明らかになっただけでも257回、証拠もしっかり残っている。

一番分かりやすい手口は、金利を高く申告すると銀行の業績悪化と判断され、貸し倒れ引き当て証券(CDS)の価格は上昇する。ヘッジの悪用である。これで売り抜ければ巨額のあぶく銭が転がり込む寸法だ。

リーマン以前の景気のいい頃の話で、まぁ、これは小遣い銭稼ぎのいたずらレベルかもしれないが、立派に犯罪要件を構成している。

LIBORと財務危機の隠蔽

こちらも基本的にはバークレイズの単独犯。いわば粉飾決算と似たような性格を持つ。

今年初め、バークレイズは他行を下回る金利を設定した。低金利は資金が豊富であることの表現である。

しかし、これは実体と乖離していた。同じ時期、CDSによるバークレイズの債務保証コストは33%上昇したのである。

実はこれは必ずしも単独犯とはいえない。どこの銀行も金利を低く設定していたようだ。だからLIBORそのものが実勢に比して低めに経過した。

早くも08年の4月には、ウォールストリート・ジャーナルが、銀行間取引のレートとCDSスプレッドを比較して、「調達金利が不自然に低いまま維持されているのはおかしい」と指摘している。

5月にはさらに踏み込んで、「実勢よりも低く見えるように数値が操作されている」と報じた。そしてLIBORがもはや信頼できないかもしれないとの懸念を銀行家やトレーダーが抱いていると書いている。

LIBORと政策誘導

LIBORの不正操作の第五のパターンで、最近になって急浮上して来た問題である。事実であるとすれば、不正操作に中央銀行がかかわっていたということで大変深刻な問題だが、いまのところ当局は否定している。

バークレイズのダイヤモンド前CEOによれば、リーマンショック時にイングランド銀行(日本でいえば日銀)のタッカー副総裁と電話会談し、このときタッカーが「英国中央銀行および英国政府が暗黙のうちに借り入れコストの実態隠しを認めていた」とし、電話記録を提出した。

こうなると単純な金融機関の「不正」ではなく、2008年の金融危機を乗り切るために中央銀行および政府も「関与」していたことになる。

フランスの資本が逃避してくるなら「赤絨毯を敷いて歓迎する」といったキャメロン首相もいまどき青くなっているだろう。