今朝のBSワールドニュースでキャスターがとんでもないことを言っていた。
「衆愚政治というのはギリシャが語源だが、今のギリシャは衆愚政治そのもの。借金は返さない、しかしユーロ圏には残りたいなどと、馬鹿なことを言っている」と、言いたい放題。

こういう弱者をののしる“風習”は、南・北朝鮮人をことあるごとに痛めつけるネトウヨでおなじみだが、天下のNHKのアンカーが、とたんの苦しみにあえぐギリシャ国民を「衆愚」呼ばわりするのは、さすがにご法度ではないか。

思わず、「勉強もしないで利いた風なこというな!」 と、叫びたくなる。

理由が何であれ、いまやギリシャが借金など返せる状況にないことは厳然たる事実だ。金持ち代表の英エコノミスト紙でさえ、再交渉するしかないと認めている。

さらに言えば、今はギリシャを救済することを明確にするかどうかが、ユーロ圏生き残りの鍵になっている。振り返ってみれば、いろいろ難癖つけて証文を出し渋ったのが今回のスペイン事態を招いたのではないか。

ということを前提にした上で、緊縮措置の中身を見てみよう。

まず、抑えておかなければならないことは、すでにギリシャは過去3年間緊縮措置を続けてきたことだ。その結果GDPはマイナス10%近い落ち込みを見せている。

今回の、金融支援の見返り措置は、それにさらに上乗せした緊縮だ。項目を見てみると、信じられないような数字が並んでいる。以前のブログで挙げた数字を再掲する。

D.2012年度に行われる付加的措置

①医療セクターの縮小。医薬品費の11億ユーロ削減。病院の医師に対する時間外手当を5千万ユーロ削減。

②政府の活動費および消費支出を3億ユーロ抑制。公共投資プログラムの4億ユーロ縮小。

③教育文化施設を閉鎖し、2億ユーロを削減。

などなどだ。

医薬品費の1100億円削減など信じられるか?

12日の赤旗には、現地の状況が生々しく報じられている。

病院や薬局から薬がなくなった。薬を見つけるのに走り回らなくてはならない。「不足が続けば患者は死んでしまう」と、糖尿病などの患者団体が訴えている。

NHKキャスターが言っていることは「もっと削れ、削れなければ命を削れ」ということに他ならない。


アテネ・オリンピックのとき、マラソンのトップランナーに観客が飛びついて妨害した。彼は結局優勝できなかった。確かブラジルの選手だったと思うが、ブラジルの人々はギリシャ国民を許さないだろう。

EUの理想とかユーロの未来に期待してきた人々にとっては、ぐうたらギリシャのためにEUが瓦解していくのは、マラソンのときと同様に、見るに耐えないシーンかもしれない。しかしその怒りの矛先はギリシャ国民に向けられてはならない。


美智子様の結婚パレードのとき、我が家でも貸しテレビを入れた。向こう三軒両隣で集まって、カーテンを閉め切ってテレビに見入っていたそのとき、学生風の男が突如馬車に駆け寄った。すぐ男は捕まりパレードはなにごともなかったかのように進められた。アナウンサーは男が「マルクス主義者」だと言っていたように憶えている。

これをもって、日本国民はみんな「あほのマルクス主義者」だといわれれば、マルクス主義者もふくめて猛反発するだろう。

逆もある。戦前に天皇の行列に爆裂弾を投げつけた朝鮮人がいる。上海でも日本占領軍の司令官に爆弾を投げた朝鮮人がいる。やった男はテロリストであり、孤立した存在だったが、その背後には日本帝国主義の支配に抗議するすべての朝鮮人がいた。

話が回りくどくなったが、ようするにジャーナリストたるもの、「ギリシャ人は怠け者」だとか、「ギリシャ人は自己主張が強い」とかいう変な「一般論」を、決して振り回してはならないということだ。


見たところキャスター氏はそれほど薄情な人ではなさそうだ。言ってしまったことはしかたがない。ジャーナリストというのはそういう宿命を背負っている。願わくば、少し実情を調べた上で、発言を修正していただきたいと思う。