今後の電力需給、さらには貿易収支の動向を語る上で、LNGの需給見通しは避けて通れない。
今回の野田首相の発言でも、LNGが高騰すれば日本経済が破綻するという脅迫が織り込まれていた。またペルシャ湾危機がLNGの危機でもあるかのような一部論調も見られる。

供給量、供給価格の安定は、原発からの離脱を考える上で決定的なイシューになっている。

まず、LNGが中東に依存しているというのはウソである。輸入先御三家はインドネシア、オーストラリア、マレーシアであり、そのあとにカタールが入るが、これはスポットものの供給能力があるからであり、インドネシアの供給が一時的にダウンした補完である。

第二にLNGの供給能力は十分に余力がある。昨年タイトになったのは、大震災直前に世界的な供給過剰があり、調整局面に入っていたためである。採算ベースが変化すればいつでも開発可能なガス田は数多く存在している。

第三にLNG価格は今後低下するものと思われる。大震災を受けて急遽LNG買いに走ったが、アジアものは長期契約が多く、カタールのスポットものに頼らざるを得なかったことが輸入価格を押し上げている。
スポット価格は長期契約価格の3,4倍といわれている。数字は未検証だが、もし特殊状況における価格だとすれば、今年以降は半分程度に下がると予測される。

アメリカのシェール・ガスの開発は、LNGの国際価格に極めて大きな影響を与えている。最大の消費国で輸入がゼロとなればそれだけでも価格は下落する。さらにEU圏、アジア圏でも経済成長の鈍化により需要は停滞すると思われる。

LNGの採掘・輸送・利用に関する技術開発も飛躍的に進んでいる。これまで石油に依存していたエネルギー源がLNGにより代替されていく可能性も高い。ただしこれは原油価格、ホルムズ海峡緊張の動向による。

以上の通り、供給力から見ても価格から見ても否定的な見通しはない。少なくとも採掘リスクの高いウラニウムよりはるかに安定しているといえる。
野田首相のいう「エネルギー安全保障」の上からは、むしろ原油やウランとの代替により、原油依存・中東依存を軽減させることが望ましいのかもしれない。