介護施設において職員の苦痛はうんこの処理である。
汚いという感覚は比較的慣れるが、臭いはその場その場では嗅覚の疲労により軽減されるものの、別のクライアントの対処時には一から出直しだ。

人間、年取ると枯れるというが、うんこの臭いはむしろ強烈になる。ある意味で加齢臭ともいえる。
これは、胃酸分泌が減少することから、比較的低pHを至適とする腸内細菌が減弱し、雑菌が増えやすい環境があり、かつ便秘により便内容の長期滞留が臭気の発生に好適な環境を提供しているからであろう。

したがって発生予防のストラテジーとしては便通促進と乳酸菌製剤などの投与ということになる。
さらに食品もせんいを多くふくむものを積極的にとることで消化管運動を刺激し、水分量の著しい減少をもたらせないようすることが必要だ。
また腹筋や背筋を鍛えたり腹壁マッサージ等を施行することで、排出力を増強することも有効であろう。

しかし、これらのことは介護施設ではルーチンとして行われているので、教科書的な方法では解決しないことは明らかである。

便の基本的な臭いは、ぬかみその腐った臭いである。これは米と野菜だけの食事を取ったときに生じる。植物性蛋白の発する臭いである。

動物性蛋白がこれに加わると、硫化物の臭いが加わり、一段と強烈になる。とりあえずここを抑えたい。

メタルカプターゼなど臭気を産生する酵素を抑えるか、産生されたスカトールなどの悪臭物質を吸着するかの方法が考えられる。

ネットで調べたら、ココアが良いと書かれていた。ココアの中に含まれるリグニンという物質が臭気を吸着するようである。とりあえず、強烈な人に試してみようか。

追補

胃酸分泌の低下は胃壁細胞の萎縮に対する対応という側面もある。胃壁が弱くなっているのに若い人並みに胃酸を分泌していたら、たちまち胃潰瘍になってしまう。
困ったことには、けっこう多くの人が胃酸分泌抑制剤を服用している。高齢者に逆流性食道炎はつき物だからだ。

硫化水素は胃から十二指腸に降りてきた強酸性の食物を中和するメカニズムの一環として働いている。胃酸が減ったのにあわせてこちらも減ればよいのだが、そういうホメオスターシスは働かないのだろうか。