Ⅱ 世界を襲う失業・貧困の波と不平等の拡大

A 米国における貧困の実態

米国はこれまでも双子の赤字といわれる貿易赤字と財政赤字を抱えてきたが、GDPの上昇と連邦債の発行で補ってきました。しかし08年のリーマンショックを気にGDPが落ち込み、財政赤字幅が一気に拡大しました。

一方で貧困者の数は激増しています。米国勢調査局の国民生活調査によると、一世帯の年収は4万9千ドルで、昨年に比べ2.3%の減というから相当なもの。円にすると78円換算で390万円、日本より低くなる。日本の世帯あたり収入は400万円くらいだったはず。しかし貧富の差が激しいと平均値はあまり意味を持たなくなる。

ついで貧困者比率。米国統計では4人家族で2万2千ドルを貧困ラインとしている。円で言うと170万円、月額14万円、1日1人1200円、である。これは貧困ではなく飢餓ラインである。

フードスタンプの受給対象者はもう少し広く、4人家族で月収2400ドル以下となっているが、日本の生保基準より厳しい。しかも丸ごと保護ではなく食料費の一部が補助されるに過ぎません。

貧困層人口は4600万人。これは国民の7人に一人に相当する。まさに貧困大国だ。しかもこの3年間で1.6倍に増えている。母子家庭の貧困率は32%に達している。

民間世論調査機関の調査では、米国の全世帯 の2割に当たる約6200万人が、資産ゼロか負債を抱えている。別の調査によれば、伸び悩む年収と物価高を乗り切るために「必要な物しか買わなくなった」米国人が70.5%、食費を抑える人も42%という高率に達している。

ティーパーティの財政縮小の主張は、暴動覚悟の狂気の沙汰だということが分かる。

B 米国における富裕層の実態

米国トップ0.1%の超富裕層が約46兆ドルの富を抱えている。日本円にすると4千兆円という、途方もない額になる。日本のGDP9年分、国家予算50年分だ。しかもこの富は今後10年間に倍増すると予想されている。ということは毎年400兆円づつ積み増されていくことになる。さらにオフショア資金は、今後10年間で100兆ドルを超える見込みだ。(WSJ日本語版)

ちなみにこの調査結果では、日本の富裕層が米国に続いており、現在、10兆ドルの資産は 2020年までに約19兆ドルに膨らむものと予想される。

法人税は9%以下に激減した。米企業の3分の2は税を納めていない。タックスヘイブンへの資本移転や生産拠点の海外への移動のためだ。

C バフェット発言

政治家たちは『痛みを分かち合うこと』を求めてきた。だが、そのなかに私は含まれていなかった。富裕層に重税を課すと、投資意欲を削ぎ雇用にマイナスに働くと叫ぶ人がいる。それは嘘だ。20世 紀末の20年間、私に対する課税率はもっとずっと高かったが、投資意欲が削がれることはなかった。逆に富裕層減税の導入後には、雇用創出数は減少している。これが事実だ。

D 9月のオバマ経済演説

国内経済に関する部分は、読んでいて胸がすく思いがする。どこかの国の首相の胸くそが悪くなるような美辞麗句とはえらい違いだ。

「少数が豊かで多くの国民が生活苦を強いられる国を選ぶのか、全国民が公平な機会を得て、公平な負担を背負い、同じルールに従う経済に復活させるかの選択だ。問われているのは民主党か共和党かではなく、アメリカの価値観だ」

「アメリカ自らの製造業、技術力を持った労働者、アメリカの国に基盤を置いた持続可能な経済の構築へ向けた青写真を示す」

「海外に労働力を求める企業に税優遇は行わない。減税は国内にとどまり、国内で雇用を生む企業を対象とする。大企業の税金逃れを防止するため、多国籍企業に一定の税を課す」

「国防費5千億ドルを節減する。戦費縮小で浮いた財源の半分は債務返済に、残りは国家建設のために使う」

「大富豪の4分の1が中間層家庭よりも税率が低い。公正な税負担のため税制改革が必要だ。100万ドル以上の所得があるのなら、最低でも30%以上の税金は払うべきだ。減税措置の撤廃も必要だ」30%ねぇ、あほブッシュの前は最高70%なんだけど…

「経済回復への動きがまだ弱いのに、1億6千万人の勤労者への増税を避けることこそ、最も差し迫った優先課題だ。アメリカ国民の98%をしめる年収25万ドル以下の家計の増税をしてはならない」25万ドル=1900万円? ちょっと高過ぎ?

「こうした政策を“階級闘争”だと呼びたいのであれば、そう呼べばいい。億万長者に、少なくとも自分の秘書と同じ程度の税率で納税してもらう。ほとんどのアメリカ人はそれを“階級闘争”ではなく常識と呼ぶだろう」

「金融危機の引き金になった住宅担保証券に対し、不正調査にむけた特別チームを立ち上げる。庶民の金で危ない賭け事をすることはもう許さない」