ロンドンクジラの話は、結局ボルカー・ルールの話に落ち着く。「ボルカー・ルールを勉強した Ⅰ、Ⅱ」でかなり突っ込んで解説してあるので、一度ご覧いただきたい。

10年くらい前、サラ金が全盛だった頃、悪質な取立でずいぶん社会問題になった。ところが報道されなかった“ことの本質”は、サラ金が大手銀行のダミーだったということだ。

銀行は一般融資先には貸し渋り、貸し剥がしをやって苦境に追い込んでおいて、高利貸しから融資を受けるよう仕向ける。その上で、高利貸しに資金を提供し利ざやを稼ぐという悪辣な商法に走った。

しかしこのくらいは可愛いもので、アメリカでは高利貸しにではなくヘッジファンドに金を回した。

ヘッジファンドとは

ヘッジファンドというのは元々は保険の代理店みたいなもので、貸し倒れになったときに備える保険を扱っていた。ところがこの保険そのものに値がついて売買されるようになったから話がややこしくなる。

いわば企業の不人気投票みたいなもので、不人気なほどその保険の値は上がることになる。

商品が直接売買される商品市場、会社の信用が売買される株式市場についで、リスクが売買されるヘッジの市場が登場するようになった。さらに通貨の変動相場制移行に伴い為替市場も巨大化し、これにもヘッジ市場が関与するようになった。

ところが今回のロンドンクジラでも分かったが、この市場は非常に閉鎖的で謎めいている。例えて言えば鉄火場みたいなもので、とても堅気の人が手を出すようなマーケットではない。

しかもヘッジという性格上、一般的には禁じられているカラ売りに近い効果を示すので、その肥大化は一般市場に対して撹乱的な要素が強い。したがって規制の対象とすべきである。

巨大銀行の直接支配へ

10年ほど前までこの世界は、勝負師の世界だった。しかしそこに巨大な利益の源があることに気づいた巨大金融機関がなだれを打って参入した。

最初は証券会社、さらにJPモルガンのような堅気の商業銀行まで加わるようになった。

アメリカでは銀行が直接自分の金を証券投資することは禁じられている。しかしヘッジというのは、そもそも貸し倒れ保険みたいなものだから、「これは投資ではありません。安全対策費です」といいぬけることができる。

オバマ政権が打ち出した銀行の投機資本への投資禁止策は、計画の立案者の名をとり、ボルカー・ルールと呼ばれている。目下議会で審議中だが、法案反対の先頭に立っていたのがJPモルガンの社長だった。

彼の反対の理由はこういうことだ。

たしかに以前は指摘されるような傾向もあったが、リーマンショック後は各金融機関とも襟を正し、やばい商売には出を出さなくなったので、このような法案は不要だ。ヘッジも、貸し倒れ対策上必要な範囲にとどめている。

それがウソだったことがばれてしまったわけだ。この事件はボルカールールの成立に手を貸す結果となった。

今日の国際的な経済危機、金融危機はその根源を辿れば国際投機資本に行き着く。国際投機資本への有効な規制こそが、経済の再活性化と安定化のために避けて通れない課題となっている。

そういう点で、今回のロンドンクジラは世界の経済をルールあるものに再建するための救世主だったのかもしれない。