タイのインラック政権がなかなかよい。
タクシン政権もかなり期待したのだが、時代錯誤のクーデターによってつぶされた。この国における封建層の異常な強さは、米作りと食料輸出立国という経済構造の上に乗っかっていて、農村部の分厚い保守地盤が軍と国王を支えている。
これまで民政時代の政治家も、トラの尾を踏むことがないよう細心の注意を払っていたようだ(岩波新書「タイ」による)

民衆の力と、新興資本家のカネの力、それに旧体制の力がせめぎ合いながら拮抗していたのが、タクシン政権によって一気に動いた。
このときは97年の金融危機によって、エスタブリッシュメント勢力は手痛い打撃をこうむっていた。企業や銀行に投資していた資産家のかなりの部分がスッテンテンになったという。負け組を一気に整理しようとした勝ち組代表がタクシンだったといえる。タクシン勢力には70年代にゲリラ戦を経験した学生運動出身者が加わり、民衆の組織に力を注いだ。

タクシンは最初はカネの力で軍と旧体制勢力に対抗した。旧体制はその方向を許容したが、タクシン派が民衆の力を恃むようになると事態は一変した。彼らは体制維持に危機感を抱き、クーデターという賭けに出た。

しかし10年間にわたるタクシン勢力への抑圧にもかかわらず、結局旧体制の復活は失敗した。タクシン政権はより革新的なインラック政権としてよみがえった。インラック政権成立前の両派の「拮抗関係」は、結局たんなる見せ掛けでしかなかった。いまや国民の圧倒的多数が旧体制ノーの立場に立っていることが明らかになった。

インラック政権の打ち出す政策は、タイ史上初めてというものが目白押しだ。
そのひとつが、今回発表された最低賃金の4割引き上げだ。
赤旗によると

タイ政府は来年から最低賃金を約40%引き上げ、全国一律770円とすると発表。首都周辺6県では先月から先行実施しています。大幅な賃上げを全国に拡大し、労働者の購買力を高めて経済活性化につなげるのが狙いです。
経営者団体は、これにより経営コストが16%上昇し、中小企業の倒産が続出すると反発。また賃上げは物価の上昇を呼び、労働者の生活向上には結びつかないと主張しています。

これに関して大手証券会社の理事は以下のようにコメントしている。

97年の通貨危機による経済悪化で打撃を受けたタイ企業は、内部留保の蓄積を進めた。動機は自己防衛だったが、その後10年以上、労働者の実質賃金はほとんど上がっていない。

どこかで聞いたようなコメントです。