イ・ムジチのレスピーギ 「リュートのための古代舞曲とアリア」(第三組曲の第三曲)を聞いた。久しぶりだ。

音質だけで言ったら、これは相当落ちる。しかし音質なんかは問題ではない。

それがイ・ムジチのレスピーギ 「リュートのための古代舞曲とアリア」だ。

なぜかこの演奏からは戦争の匂いがする。1960年代の録音だから、もう戦争から15年経っているのに、この演奏はまるでレジスタンス青年へのレクイエムのように聞こえる。ベレエ帽をかぶってセピア色の写真から微笑みを投げかける兄へのレクイエムだ。

戦争の臭いのする演奏がもう一つある。ライナーの指揮するバルトークの弦・打・チェレスタのための音楽だ。

曲そのものが、ナチの弾圧を逃れアメリカに渡ったバルトークの曲で、迫り来る戦火の響を漂わせているが、ライナーはそれを直裁に抉り出す。これも60年前後の録音だ。

60年頃というのは、戦争のことなど思い出したくもなく無我夢中でやってきた人々が、戦争を忘れてはならないと思いなおした時期なのかもしれない。