書評の中の一節の紹介

本山美彦、菅野稔人著「金融危機の資本論」(青土社)は、08年の世界金融危機を資本主義の歴史などから検証し、「アメリカが“世界の金融センター”への道を歩んできた一つの帰結」だと分析します。

金融危機は資本主義の「自浄作用」、「復元作用」がはたらいたもので、資本主義は崩壊していくのではなく、「本流」に戻っていくと見ています。

言葉が踊っているような感じがしないでもないが、そういう見かたはたしかに面白い。ただこれだと恐慌はすべて経済の正常化作用ということにされてしまうので、大恐慌がもたらした第二次世界大戦という過去の経験は教訓化されずに終わってしまいそうな危うい気分もある。

19世紀から20世紀、21世紀と人類の生産力発展には猛烈なドライブがかかっている。そういう歴史的スパンの中にもう一度位置づけなおしてみると、「そういう側面もあるね」と納得できるのかもしれない。