こういう話はとても楽しいが、えらく難しい。
素人にはそもそも上手い下手の基準が分からない。
さりとて美人コンテストをやっても意味がない。
結局は、実はだれそれさんのフアンですということになる。
考えてみるとたしかに、最近はテレビでコンサートを楽しんでいる、としか言いようがない。
なぜかというと、音楽を聴いたはずなのに、印象に残っているのはバイオリニストの衣装だ。
だから、私は諏訪内さんが好きだといってみても、あの顔でなかったら、たとえば竹沢さんみたいなカッコだったら、
と、内心忸怩たるものがないでもない。

ドイツだとバイオリン弾きはガイゲシュピーラーで男と決まっていたようだ。しかし日本ではバイオリンのようなナヨナヨした音を出すのは女と決まっていた。小学生の頃、バイオリンといえば諏訪根自子、巌本真里、辻久子と相場が決まっていた。諏訪は聞いていないが、巌本と辻は音鑑の例会で聞いたおぼえがある。
巖本は“あいのこ”で、いかにもそれらしい雰囲気だったが、辻さんはステージから飴玉でも投げそうな叔母さんで、たしか旦那が伴奏していた気がする。ストラディバリウスを買ったのはそれよりずっと後の話だ。

巖本さんはそのころは四重奏団の一員で、記憶としては鱒の第4楽章、坪井さん(男性)というピアノの音に度肝を抜かれた。県民会館ホールのピアノは茶色のベーゼンドルファー。ピアノのおさらい会でみんなが弾いたピアノだが、そこからとんでもない音がとびだしてくる。それにたまげていたから、巖本さんのバイオリンの音などまったく記憶にない。

その後しばらくは男の時代が続いた。江藤俊哉、海野義男、田中千香士、和波タカヒロというぐあいで、女性はどちらかというと色物あつかいだった。ロシアに行った佐藤陽子とか久保何とかという時代があった。

ビジュアル系のはしりといえば前橋汀子だろう。白黒のテレビでかなりのアップ顔が写ったが、今にも落っこちそうな着けまつ毛と、ひび割れしそうな分厚いファウンデーションが印象的だった。

その後の潮田益子と後藤みどりは決してビジュアル系とはいえない、しかしその間にシヴィックなレベルではビジュアル系の進出がどんどん進んでいたのだ。それが千住真理子であり小林何とかなのだ。

日本の女性バイオリニストの世界は女子フィギュアスケートとよく似ている。実に多士済々なのだが、美貌とカリスマ性から言えば浅田真央以外にいないのである。それが諏訪内明子なのだろう。いろいろスキャンダルが飛び出すのも、ネタになるからだろう。

五島みどり、庄司なんとかの情熱派は、音だけ聞いているとちょっと胃もたれする。神尾真由子は浪速ド演歌の世界だ。

周回遅れかどうか知らないが、前橋汀子のバッハのパルティータが、「なんじゃこりゃぁ」という感じでいいんですね。
日本のバイオリニストに、テクニックとか根性というだけでなくて、「伝統の深み」みたいなものが出来上がってきたのかな。