10年前に低金利路線から量的緩和路線に踏み切って以来、世の中には金が溢れかえっている。普通なら天文学的インフレになるはずが、ひたすら金欠状態にあえいでいるのが現状だ。
つまり回る金の量は変わらずに、闇の世界に沈殿していく金の量だけがひたすら増えていることになる。この金がふたたび流通するようになることが、経済再生の根本である。

大企業やその内部留保をただ目の敵にしているわけではない。内部留保もふくめた闇の金が再循環に入っていくメカニズムを作ることが、あらゆる政策の根本に座らなければならないということである。

内需主導というが、別に内需でも外需でもどちらでも良い。とにかく回る金を作ることであり、増やすことである。

その方法としては二つのルートがある。ひとつは政府の税を通じた所得再配分であり、もうひとつは金融機関を通じた市場の活性化である。いま消費税を上げるべきではないとする根拠は、金融機関の貸し出し能力に強い不安があるからだ。

97年の「官製不況」を勉強すると、消費税の値上げもさることながら、「金融ビッグバン」の影響が極めて強かったことが分かる。

どこかに眠っている金でなく、循環している金から9兆円引き抜いてしまえば、たちまち金欠になる。しかしそのときに眠っている金が動員できれば、それはかなり緩和される。リスクは金利でヘッジされる。

しかし、そのとき同時に金融ビッグバンが進行していたから、銀行は貸し出しを強化するどころか、さらに市場から金を引き上げた。バブル以来の不良資産を一気に処分し、自己資本比率の達成に狂奔した。

燃え上がる列車から逃れた乗客は、隣の線路を走ってきたビッグバン列車にひき殺されたのである。

ウィキペディアに拠れば、かつて97年の政策不況のとき、当時大蔵省で財務官の立場にあり、事態を離れたところから見ていた榊原英資は「日本には、経済全体、日本全体を見て政策決定をするメカニズムが決定的に欠けている」と評したそうだ。
いままたこの言葉がよみがえりつつある。