1月の貿易統計速報(財務省)が発表された。貿易赤字が1.4兆円に膨らんだ。赤旗見出しでは欧州危機と円高が理由としている。
しかし数字を見てみると、どうもそうとは言えないようだ。

輸出が10%減って、輸入が10%増えたのだから赤字になるのは当然だ。輸入の増大はほぼ原油高と天然ガスの輸入増加で説明できる。いわば震災被害だ。
問題は輸出の方で、対中国輸出が20%減っている。中国をふくめアジア全体でも13.7%減だから中国への輸出減がいかに大きな影響を与えているかだ。

ここから二つのことが言える。
中国やアジアの日本からの輸入は生産財が中心であり、中国の経済成長にとって不可欠のものだ。これが落ちたことは円高では説明できず、成長の停滞がもたらしたと考えるべきだということ。それは、08年のリーマンショックと現下のユーロ危機の複合としてもたらされたものであり、注意深い観察が必要だということである。これが一つ目。
もう一つはアジアとの経済関係を見るとき、そこへは莫大な資本が投下されており、いまや貿易外収支と連結して評価しなければ意味がなくなっているということである。
しかし大多数の国民はその恩恵に浴せず、その結果起こる円高不況の犠牲者としてひたすらに生きなければならなくなっている。

日本は経団連と心中するのか

後者の問題は経済・財政の課題として別個に考えなければならない。所得の再配分と「内需の拡大」だけではだめで、生産への再配分が必要になってくる。既存の大企業を中心とする経団連には、この発想は生まれることはないから、政府・経産省のイニシアチブがどうしても必要だ。

経産省(昔の経企庁は今はどうなっているのだろう)が今の財界すりよりの姿勢を改めて、「日本丸」の行く末を力強く打ち出すことが必要ではないか。その際、アジア全体が底上げされるような政策シフトを断行すべきだろう。

時代は変わった

参考までに1月の対中輸出は2割減っても7千4百億円、対米輸出は7千5百億円であり、もはや勝負はついている。アジア全体では2兆3千億円だ。いまやアメリカなど目ではない。対米輸出に期待しているのは自動車産業くらいだ。
TPPの経済的メリットはほとんどゼロ、マイナス要因ばかりのTPPを推進するのは、中国の経済的封じ込めを狙うアメリカへの義理だてが唯一の理由だ。「そんなことをしている時代ですか?」、と言いたい。