息子は小僧に送られ、
娘は女郎に追いやられ、
親父は炭焼小屋で声もなく圧死した。

残されたやもめは、焚き火の煙と泣き明かしに、
ただれくさった両眼をしばたたき、

背では赤ん坊が声を枯らしてあえぎ泣き、
村には女たちを養う力もない。

雪道には橇あと、
橇あとには馬糞の凍塊、

いくじなしは、
世の楽しさも知らない子供を道連れに、
鉄道線路でへたばり殺された。

田舎街への踏切は一面の血しぶきに染められ、
染められた血潮は雪で埋められた。



ねむの木は眠っても、
花は
苦痛に悩むほっぺたに
頬ずるような微笑を呼びかける。

あの ねむの木の家は
なんと朗らかな
俺たちの同志の住居だったことか

ねむの葉は眠り、
俺は眠られず。

あの日
プロレタリアートの敵の
憎むべき白テロ…


小金井の桜の提はどこまでもどこまでも続く

私の寝台自動車はその提に添うて走る
春めく4月、花の4月、
私は生死をかけて、
療養所へゆく。

赤や桃色の椿が咲く、
八重の桜も咲いている。

私は死を覚悟の眼で、
美しき花々の下を通ってゆく。


今野大力の経歴については下記を参照のこと
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-25/2007082512_01faq_0.html