安保理でシリアの「民主的な政体への移行」をもとめる決議が提出され、15か国中13カ国が賛成したが、ロシアと中国が拒否権を発動し否決された。
ロシアのアサドへの肩入れは論外で、軍事援助を行うなどもってのほかだ。その武器が民衆虐殺のために使われることを知りながら売るというのは、虐殺の共犯者としての意味を持つ。
これに対し中国の立場はあまり広く報道されていない。

赤旗によれば、「すべての当事者が参加する政治プロセスが必要だが、同時にシリアの主権・独立は最大限に尊重されなければならない」と主張。
今回の決議案は、「シリアにおける政治対話のプロセスに前もって内容を押し付けるものだ」と批判した。

解説によると、当初の決議案にはアサド大統領の退陣要求が含まれており、軍事行動の可能性を否定していなかった。
これはたしかに山下奉文将軍の「無条件降伏」提案と同じであり、アサド側が呑めるものではない。
この二点については摺り合わせの時点で削除されたが、全体としてアサド政権つぶしの色合いが強いものであることは間違いがない。

この交渉は、和平を前提に置かなければならない。ということはお互いの存在と、その当面の存続を保証しあわなければならない。というしんどい交渉である。
そもそも運動のきっかけは、アサド独裁に対する抗議であり、退陣と民主化をもとめる運動だったのに、その相手を認めなければならない、というのは胃が痛くなるような矛盾である。

アサドはカダフィの死体をテレビで見ただろうし、自らの生存が保障されない交渉に臨むことはないだろう。平和的に解決しようとするならば、退陣を交渉の前提にすることは出来ないのである。

とすれば、制裁を強化する以外に他国が介入する余地はないし、たのまれたときに調整役として登場するほかないのである。とすれば、調整役としてのフリーハンドを維持するのが目下の目標となるのではないか。

「耐えがたきを耐え」路線は、実はリビア内戦時にアフリカ連合や非同盟諸国(アラブ連盟以外の)が掲げた路線でもあった。この流れから言うと、中国の言い分は必ずしも的外れとは言えない。

まずは制裁を強化しつつ、両者の話し合いを促し、和平実現に向け調整を図っていくというのが基本路線であろうし、安保理決議が否決されたことが、事態をますます悲観的なものにしているとは限らない。