①エクアドルのGDPは堅調に推移していることが分かる。少なくとも深刻な状況が到来しているとはいえない。

②経済成長率はおおむね3~4%を維持している。自由主義経済の隣国コロンビアとほぼ同様の成長を達成している。乱高下はリーマン・ショックだけではなく原油価格の動揺も関連していると思われる。

③失業率が高止まりしているというのは、ほとんどデマに近い。高止まりしているのは木下氏の愛する新自由主義の国コロンビアのほうである。

④インフレ率は低く安定している。2000年の狂乱物価は新自由主義とドル化の導入に伴うものである。

⑤国際収支はリーマン・ショック後急速に悪化している。しかし新自由主義のコロンビアにおける国際収支の悪化ははるかに深刻である。

以上のグラフは「世界経済のネタ帳」から引用させていただきました。

この5つのグラフで、

①国内経済のファンダメンタルが急速に悪化しているのか。

⑦失業率や貧困率は高まっているのか。あるいは改善は見られないのか。

については否定された。

次いで財政問題に移ろう。②,④、⑨,⑩、⑪が財政にかかわる批判である。

財政については、なんと当の日本大使館がしっかり統計を流してくれている。

https://livedoor.blogimg.jp/shosuzki/imgs/3/b/3b864941.jpg

これで見ると、財政赤字の原因が乱脈な歳出にあるのではなく、石油収入の半減にあることが明らかである。これはベネズエラでも同じだ。10年に原油価格が高騰した際には収入は回復し、これに伴い赤字も半分以下に減少している。これについては「ベネズエラ経済を、ふと考える」、「ベネズエラ経済: 立ち止まって考えた」、「ベネズエラ もう少し考えた」をご参照いただきたい。

ただベネズエラは思い切り歳出カットしたが、エクアドルはそうしていない。10年には逆に支出を8億ドルほど増やしている。中身は120%人件費である。リーマンショック後の雇用確保に当てられたと見られる。

 それにしても赤字幅は歳入160億ドルに対する11億ドルであり、その半分以上が資本支出の増によるものである。リーマンショック後の景気・雇用対策とすれば過大とはいえない。

https://livedoor.blogimg.jp/shosuzki/imgs/8/d/8d4fb1a6.jpg

12項目にはふくまれていないが、対外債務の経過を図示する。

絶対額そのものは算出法の違いがあるようだが対GDP比は10年前の54%から14.3%にまで低下しており、11年には若干上昇したがそれでも14.9%である。

別な記事では政府債務残高は32億ドル対GDP比5.9%とされている。いま話題のギリシャは4500億ドル、スペインは9千億ドルに達する。悪いのと比べてみてもしょうがないが、二桁違うのである。

同じく日本大使館資料から

最低賃金 / 平均収入 / 最低・基本生活費 (出所:国家統計調査局INEC)

https://livedoor.blogimg.jp/shosuzki/imgs/0/b/0bb374f8.jpg

この図で注目すべきは、平均収入が徐々に上昇し、08年を機に最低生活費を越えたことである。

⑧国民の生活は悪化しているのか。という問いに対する答えはノーである。

なおラテンアメリカ諸国のジニ係数は以下の通りである。

 ブラジル:59.3
 パラグアイ:57.8
 コロンビア:57.6
 チリ:57.1
 メキシコ:54.6
 アルゼンチン:52.2
 ペルー:49.8
 ベネズエラ:49.1
 ボリビア:44.7
 ウルグアイ:44.6
 エクアドル:43.7
(出所:国連開発計画)

エクアドルはラテンアメリカで最も格差の少ない国といえる。(この表にはないが、ニカラグアはもう少し低い)

そろそろまとめに入る。

論者が指摘した12のポイントのうち、①、⑦、⑧、⑨、⑩、⑪は否定された。②については積極化はあったと見てよいが、何を以って“急進化”と呼ぶのか分からない。③はそもそも間違いである。④は部分的に正しいが、常軌を逸した大幅増というなら間違いである。

⑤については「そうですか」というほかない。ただコレアは就任に当たり、「まず政治システムの改革が先で、経済はその後だ」と宣言している。彼は無能ではなく、エコノミストとしての高いキャリアを持っている。その能力を背景にして、そのように言っているのだから、それは一つの選択だろう。

⑥についても「そうですか」というほかない。著者がお付き合いしている人たちが不満を強め、閉塞感を漂わせているとしても、それはコレアの責任ではない。

⑫については調べなかったが、中国から借りるのが危険だといわんばかりの論調には違和感を覚える。

統計資料から読み解くエクアドル経済は、著者の指摘とは逆の傾向を示しているように思える。ただ、11年から始めた“急進的”な経済5カ年計画が今後どのように展開していくかは注目すべきであろう。