しつこいようだが中島氏のレポートでやはりどうしても分からない所がある。

内部留保は、09年度末259兆円であり、前年より増加している。

と書いている次の段落では、

内部留保比率は08,09年で大幅なマイナスとなっている。

(内部留保比率が低下していることにより) 内部留保が取り崩されていることがわかる。

というくだりである。

取り崩されているのに増えるわけはないので、好意的に言えば、“舌足らずの表現”だったということになる。

つまり本当はもっともっと内部留保にまわしたかったのに、回せなかった部分があるということなのかも知れない。

内部留保比率は、税引き後の純利益をどう処分するかという配分比率である。大きく言えば配当、自己資本の増強、研究開発など長期計画への投下、などがあり、最後に残った使途保留金が内部留保ということになる。(使途が決まり移動するのは次年度会計になるので、長期資金もこれに含まれるが、それは次年度決算で減額されるので、まだ同額が繰り越されるのであれば、事実上は含まれていないのと同然である)

内部留保率は、いろいろな計算法がある。企業会計上は

内部保留額/事業費+管理費+固定資産取得支出(平準化基金、退職引当金除く)×100

というのが一般的なようである。

ウォーレン・バフェットはより単純に配当性向の逆数と見ている。

内部留保率 = 1 - 配当性向 ×100 (%)

つまり (純利益 - 配当金)/純利益 x100

ということだ

したがって内部留保比率が低下したということは、税引き後純利益が増えたことを意味する。そしてその金が基本的には配当金へと回されたことになる。「内部留保が取り崩されていることが分かる」、という結論はどこからも出てこない。

いずれにしても中島氏はまったく、内部留保率の根拠となる数字を示していないので、自分で調べるしかない。