歳のせいか、もっとも若い頃からの癖だが、ほろ酔い加減になると、ふっと昔の歌が口をついてくる。
今日は「岸の柳の徒然に、ふと見合わせた顔と顔」だ。だがその後がでてこない。
ネットで調べたら、題名は「十三夜」、なんと昭和16年の歌だという。
それなのになんで憶えているかというと、実際に流行したのは戦後になってからで、NHKが流したそうだ。
たしかにこんな軟弱な歌、戦争中に歌うのはためらわれますよね。
結構由緒正しい歌で、樋口一葉の「十三夜」を下敷きにしているとのこと。

作詞:石松秋二 作曲:長津義司

河岸(かし)の柳の 行きずりに
ふと見合せる 顔と顔
立止り
懐しいやら 嬉しやら
青い月夜の 十三夜


YouTubeで探してみたら、昭和16年のオリジナル版と、戦後に歌ってヒットさせた榎本美佐江の歌唱が聴ける。
オリジナルの方は歴史的な価値はあるだろうが、それ以上ではない。榎本美佐江の方は年取ってからの歌唱で、正直、聞くに堪えない。
演歌系の歌手がレパートリーにしているが、いずれも下品だ。
なかでは田川寿美・十三夜が良い。ビブラートや小節を我慢して清潔に歌っている。発声もしっかりしている。
この歌、小唄の素養は必要だが、小唄になってしまってはいけない、という大変難しいポジションにある。そこがうまく歌えているのが好感を持てる。
少し田川寿美を聴いてみようかと思う。


びっくりしました。こんな歌手がいるなんて今日まで知らなかった。声は洋楽歌手の作りで、フォルテは胸板から出てくる。だから低音に艶があってよく伸びる。そこだけは美空ひばりと似ている。
その上に色々な声を積み上げているが、そこは美空ひばりとはまったく違う。
天は二物を与えずというが、顔は中の下の南方系、森山良子とどっこいどっこい、島津亜矢よりはまし、というくらい。ただし、口元にはえも言われぬ色気がある。ここが肝心だ。

田川寿美 TOSHIMI TAGAWA - いい日旅立を聞いたら腰抜かします。つぐない 田川寿美 もテレサ・テンよりうまい。琵琶湖周航の歌も、島唄も、大河の一滴も、これからも、夜のプラットフォームも良い。

島津亜矢がすごいと思ったが、こちらはその上を行く凄さだ。ただし器用な何でも屋ではないみたいで、相当研究しながら声を作り歌を作っている。それが逆目に出ることもある。蘇州夜曲はやり過ぎで感心しない。赤とんぼは、ちあきなおみには勝てない、年の差だろう。
どちらにしても、日本で一番うまい演歌歌手ではないか。誰かが「まだ美空ひばりの域には達していない」と書いているが、くれぐれもあんな下品な歌手にはならないでほしい。