清水先生の講演とは、「アラブの春(チュニジア・エジプト・リビア)の衝撃と激動期に入った中東世界」という長い演題の講演です。北海道AALAの主催で行われました。講師の清水学先生は帝京大学教授で、中東問題研究家です。

最初に今回の「アラブの春」を以下のように位置づけています。

1.1950年代初頭、ナセルのクーデター以来の歴史的大変動である。
2.大衆のデモで最高権力者を退陣させたのは、アラブ史上初めて
3.人間的、民族的誇りの回復だ。中東が「民主主義の墓場」という神話が打破された。
4.今後とも続く「過渡期」の始まりだ。(それがどのような過程を経ようとも、国民が主人公という流れは貫かれるだろう:私注)

そして「アラブの春」を貫くキー概念としてアラブ民族主義を取り出します。

1.アラブ人は帰属する国家に対する愛国主義と、アラブ人としての民族主義の二つを持っている。
(後者が極端に強いのがアラブの特徴ともいえる:私注)
2.アラブ民族主義は三つの顔を持っている
*支配者レベルのアラブ民族主義は、
統治のためのイデオロギー装置の一環であった。
*大衆レベルの連帯意識としてのアラブ民族主義とは、分けて考えなければならない。

*アラブ民族主義は反植民地闘争の合言葉であったし、現在もそういうニュアンスは生きている(パレスチナ問題など)

ここから先はいろいろ各論になってきますので、情報としてはありがたいのですが、感想としては難しいところがあります。
とくにイスラムについては、「偏見」とは言い切れない多くの実例があり、マスコミの「刷り込み」とばかりはいえないと思います。

また、50年代から60年代の植民地支配に対する抵抗運動を担ったのは世俗派の民族解放戦線であり、イスラムは進歩的役割を担ったことはなく、イランでもアフガンでも時代の針を後ろに引き戻す役割しか果たしていないと思います。(おそらくは私の無知もあると思いますが)

フランスで、1848年の2月革命の後、ルイ・ボナパルトという男が出てきて、確かナポレオンの甥だったと思いますが、革命を流産させて自ら皇帝の座に着くという、時代錯誤をやらかしたことがありました。その統治は20年以上にわたり続くことになります。
イランでもホメイニによるイスラム原理派の独裁が30年以上にわたり続いています。歴史というのはそうやって進むしかないのでしょうか。