(59)もうひとつの月 (Otra Luna)

HP: あなたが誰かさんの膝枕で月を眺めていて、そのそばでバンドネオンやバイオリンが何か奏でていたとしたらどんな気分でしょうか。それはどんな音で聞こえるでしょうか。そんな夢をナルコタンゴはかなえてくれます。耳元気分はもうナルコ…「おいおい、そこまでしてくれなくてもいいよ」と、ぞくぞくするほど最高です。

と、書いたのですが、これはずいぶんと最近の曲で、ナルコタンゴというグループがこれで大当たりしてラテン・グラミー賞をとったという話のようです。

したがって、というか、カバーはありません。youtube にはたくさんの音源がうpされていますが、すべてナルコタンゴの演奏です。

Carlos Libedinsky - Otra luna

これがオリジナルで、後はライブ演奏のエアチェック音源です。何回も演奏しているうちにだんだんカドがとれ、端正さが失われ、タンゴというよりムード音楽になっていきます。

タンゴの醍醐味というのは、女性のお化粧と似たところがあります。つまらない曲をみんなが寄ってたかってアレンジして、そうやって名曲に仕上げていくところにあります。つまり「化ける」んですね。

だから名曲の名曲たるゆえんは、素の美人ではなく化粧栄えのする顔なんです。ピアソラがその典型です。80年以前のピアソラを聴いたら、そのつまらなさに閉口するでしょう。

そして名アレンジャーが美しさを引き出して、それを腕っこきのプレーヤーが鳴かせるわけです。それで準備万端整ったところで、「さぁどうですか」とお披露目するのです。(関係ないけど、日本で最高のアレンジャーは荒谷俊治だと思います)

タンゴに「知的所有権」とか「著作権」は禁句です。

(60)心の底から (Desde El Alma)

HP: 針の音までふくめて、これぞタンゴです(といってもワルツだが)。颯爽とした気分とちょっとしたセンチメンタリズム。欲をいえばきりがないけど、何十回聞いても、この乗りはサルサでもカリプソでも味わえません。

Desde el alma - Nelly Omar y Francisco Canaro

とにかく、なんと言ったって、これしかない。これ以外はいらない。特筆したいのはカナロの水際立った演奏だ。結局誰もカナロを超えていないのではないかと思わせる。

なおネリ・オマールの晩年のライブ音源があるが、聞かない方が良い。エビータのかつての盟友としていろいろ浮き沈みも会ったようで、同情はするが、歌はペケ。

Desde el Alma Quinteto Pirincho Prohibido para Nostalgicos domingo

カナロの歌なし演奏。これも雰囲気が出ていて良い。たぶんカナロはこの曲が好きだったのだろう。

Juan D' Arienzo - desde el Alma

かなりごつごつしたワルツというよりレントラーの趣。だから悪いということではなく、これも立派な演奏。

ORQUESTA TIPICA DONATO RACCIATTI - DESDE EL ALMA - VALS

いろいろやっているが、必ずしも成功しているとは言いがたい。もちろん水準には達しているのだが…

Desde el alma

これはサプライズ。まさかこういう風に「心の底から」が歌われるとは…

Desde el Alma (Pugliese) Natacha Muriel & Lucas Magalhaes

プグリエセの、おそらくは晩年の演奏。研ぎ澄まされたようなリズムは影を潜め、やさしさが漂う。一面では弛緩した雰囲気も否定できない。なおこれとは別にプグリエセのライブ演奏がうpされているが、他と同じくひどい。ほとんど右手はマヒ状態だ。よほど金に困っていたのか、認知が入っていたのか。晩節を汚したとしか言いようがない。

SEXTETO MAYOR "Desde el Alma"

これもうpすべき音源ではなかった。セステート・マヨールの名がすたる。

DESDE EL ALMA - LEO MARINI.mpg

キューバのボレロ仕立ての演奏。バックはソノーラ・マタンセラ。