申し訳ないが、いままで何が争点なのか、いまひとつピンとこなかった。
このたび連載「JAL裁判 何が分かった?」で事情が少し飲み込めてきた。

整理解雇を行わなければ、経営が立ち行かなくなるほどの危機的状況だったのか?

日本航空は破産→再建にあたり、パイロットと客室乗務員165人を解雇した。パイロットたちは解雇反対の闘争に立ち上がったのだが、「整理解雇を行わなければ、経営が立ち行かなくなるほどの危機的状況だったのか」の評価が最大の焦点となった。

稲盛会長は「160名を残すことが経営上不可能ではない」と発言した

再建日航会長に就任した稲盛会長は、2月の記者クラブでの講演で、「160名を残すことが経営上不可能ではない」と発言した。

解雇には二つの理由があった

一つは最初にあげた危機的状況の評価。もう一つは更生計画の人員削減目標というものがあり、その達成が義務付けられているというもの。

ただ最初から二つ上げられていたのではなく、危機的状況にあるとの判断根拠が崩れた後の「釈明」として、二つ目の理由があげられるようになったという関係にある。

解雇通知の時点(2010年末)ですでに危機は克服されていた

日航の2010年度営業利益は2千億近く、過去最高を記録した。もともと再建に当たっての利益目標は250億円だった。

再建スタート時の負債総額は約4千億円。これは2011年3月には一括弁済されている。つまり負債ゼロ、年間利益2千億の超優良企業に衣替えされたことになる。

更生計画の人員削減目標はすでに達成されていた

人員削減目標は日航グループ全体で1万5千人だった。しかし実際に退職した数は1万6千人だった。日航本体では目標1500人に対し1700人あまりが希望退職に応じた。機長では目標130人に対し140人以上が退職、客室乗務員では目標660人に対し760人が退職している。

ただこの希望退職が指名解雇の後に出てきたのか、前に出てきたのかはわからない。後からであれば解雇撤回という訴えになる。

もし前だったらことは重大である。会社は虚偽にもとづく解雇をしたことになり、そもそも解雇が違法・無効であるばかりでなく、それ自体が犯罪行為を構成することにもなる。

なぜ、日航問題がすっきりしなかったかというと、やはり会社をつぶした歴代経営者の責任である。私も医療経営に関わってきたから、稲盛会長の「経営なくして安全なし」という言葉は理解できるし、共感すら覚える。
少なくとも安全を守ることと経営を守ることは、独立した二本の柱として考えるべきで、経営を営利主義と取り違えて、攻撃するのはお門違いである。
解雇撤回闘争の赤旗報道には、雇用を守るのと安全を守るのとを同じ課題とみなす雰囲気があり、これはかえって国民の支持を得にくくしているのではないか。
もっと単純に法律問題に絞って不当性を強調するほうが分かりやすいと思う。過去の乱脈経営の被害者として、そして日航を真に愛するものとして、経営側の責任をもっと厳しく追及すべきだと思う。