カフェティン・デ・ブエノスアイレスという歌があって、そこで哲学だとか自殺だとかを語った、良いことも悪いことも憶えた、などと歌っている(らしい。スペイン語はわからない)
喫茶店ならカフェだが、カフェティンというのは「サテン」という感じらしい。

学生時代の思い出は、ほとんど喫茶店とダブっている。ガロの歌で「君とよく、この店に来たものさ」などと歌っているが、「さ」という東京言葉が、ちょと違う。
「サテン」というのは「君とよく行く」ような店ではない。野郎同士で授業を抜け出して入り浸るところなのだ。私の行きつけは大学病院前の喫茶「宴」、最初はコーヒー1杯90円。そのうち店主がすまなそうに100円に値上げすると告げた。
トーストと卵つきのモーニングで朝飯を済ませ、ナポリタンのランチセットで昼飯を済ませ、午後はコーヒーとサービスで出てくる昆布茶で粘り、夜は紅茶にドボッとブランデーを入れて(これは店主とザル碁を打つときのサービス)、それを飲んでからアパートのセンベイ布団にもぐりこむか、深夜営業の飯屋でさらに酒を飲むか、これが基本パターンであった。
ちなみに飯屋はモツラーメンが名物で、略して「モツラ」と言った。おかみは樺太引き揚げで、興に乗れば「カチューシャ」を原語で歌うのが常だった。酒は1合60円だったが、翌日てきめんに頭が痛くなった。
その合間に赤旗を読み、アジびらを書き、学友(そう言えば、ときには女子学生のこともあった)をオルグし、多少は勉強もしていた。
備え付けの漫画はすべて読んだ。マガジン、サンデー、チャンピオンの三大誌、ジャンプにアクション、ビッグコミック…
4人そろえば雀荘に移動した、そろわなければパチンコ屋だ。
いま考えれば空恐ろしいほどの壮大な無駄だ。