http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/23614?page=4

で英エコノミスト誌 2011年9月24日号の記事を訳出してくれた。金持ちの声の反映として面白いので紹介する。

記事のトップ見出しは「税制と階級闘争:金持ち狩り 」というもの。リードにも刺激的な文字が並ぶ。角笛が吹き鳴らされ、猟犬たちがうなり声をあげている。世界の先進国のいたるところで、富裕層の増税を狙う「狩り」が進行中だ。

本誌(英エコノミスト)は以下のように主張する。

①小さな政府を支持し、社会保障制度のための増税に反対する

②危機において金融業界が果たした役割を理由に富裕層への増税を正当化するのは「報復」であり、課税の理由としてはお粗末だ。

③現行課税体系は不公平ではない。米国の上位1%の最富裕層の手取り収入は税引き前収入の20%未満である。彼らは連邦政府の税収総額の4分の1以上を負担している。

④高い限界税率は、起業家精神を後退させる。

⑤富裕層に対する増税だけでは、米国の赤字は解消できない。


④と⑤については条件付で同意する。①についてはまったく同意できない。②については、富裕税反対の理由にはなって いない。報復論が感情的であるのと同じように感情的だ。③については事実関係が分からないので反論の仕様がない。しかし(税引き前収入-手取収入)の 80%以上がどこに行ったのかの説明をしないとフェアーな主張とはいえない。

ということで、富裕者増税(たんなる所得税率引き上げではなく)の反対論は私にとって説得力のあるものではない。

ところで、多少気が引けたのか、彼らは富裕層からの税収を増やす正しい方法 を伝授してくれる。


①欧米の赤字は歳出削減だけで解消すべきでない。米国では、長年の減税を受けて税率が歴史的に低くなっている。米国でもそれ以外の国でも、増税により重荷の一部を担う必要がある。

②歳出削減の負担は、裕福ではない層に偏ってかかる。その一方で、グローバル化により、勝者はさらに大きな富を手にするようになっている。緊縮財政に対する有権者の支持を得るためには、富裕層から徴収する割合を高くする必要がある。

③限界税率を上げなくても、税制を効率化すれば、富裕層からより多くの歳入を得ることが可能だ。アメリカの場合、各種控除を廃止すれば税制が単純に なり、年間1兆ドルもの税収増が見込める。 控除の恩恵を最も大きく受けているのが富裕層なので、増加する税収のほとんどは富裕層が負担することになる。

④欧州では、所得税から固定資産税へと重心を移すことが選択肢の1つになるだろう。この方法なら、富裕層からより多く の税金を徴収しながら、リスクを取る意欲に対する影響を低く抑えられる。

⑤配当金やキャピタルゲインにかかる税率の格差を縮める余地がある。バフェット氏の収入の大部分は、キャピタルゲインと配当金が占めている。


この③,④,⑤、すなわち各種の特別減税の廃止、固定資産税の課税強化、配当所得課税の強化は、まさに当面する富裕者増税の根幹となるものだと思う。エコノミスト誌ですら認める、富裕者増税のあり方について、政府税調がまったく触れないのは不可思議というほかない。

私たちは角笛を吹き鳴らし、狩を開始しなければならないようだ。