ジェトロ世界貿易投資報告(各国編)より

ベネズエラの経済・貿易・直接投資動向 2011年版

 

 

2008 年  

2009 年

2010 年

実質GDP 成長率(%)

5.3

△3.2

△1.5

貿易収支(米ドル)  

456 億5,600 万

191 億5,300 万

271 億7,300 万

外貨準備高(米ドル)  

330 億9,800 万

217 億300 万

131 億3,700 万

対外債務残高(米ドル)

606 億8,200 万

738 億4,700 万

848 億8,400 万

為替レート(1 米ドルにつき)

BsF,期末値

2.147

 

2.147

 

2.600

4.300

1.経済成長

2010 年にGDP 全体の約7割を占める個人消費はマイナス1.9%となった。部門別では石油部門が0.1%増とほぼゼロ成長,非石油部門は全体が1.6%減となっている。

2009 年第2 四半期からマイナス成長に陥った後,2010 年第4 四半期にプラスに転じ,2011 年第1四半期は4.5%増となった。

数年前までとは異なり政府支出の景気拡大への貢献度は相対的に低下している。

リーマンショックの影響や、原油安もあるが、03年以降の急成長に対し一服気分が出現しているものと思われる。

公共投資により下層階級の生活が向上し、需要が亢進した。生産が追いつけないことと、輸入に厳しい制限が加えられていることから、インフレが出現した。

公共投資の効果はインフレにより相殺されている。

2010 年通年の消費者物価上昇率が27.2%を記録する一方,労働者賃金指数の上昇率は22.2%にとどまった。

この結果、GDP 全体の約7 割を占める個人消費は前年比1.9%減となった。

ただしこの国の諸指標は階級的に見なければならない。就労者の4割がインフォーマル・セクター部門という状況で、「労働者」の概念はあいまいである。

 

2.各分野の成長

GDPの停滞にはかなり政策的な要素が強い。さらにインフラの遅れが足を引っ張る傾向がある。

ベネズエラでは発電の約7 割を水力に依存しており,適切な投資やメンテナンス不足による構造的な問題がある。電力問題は引き続き経済成長の押し下げ要因になるだろう。

基幹産業である金属鉱業の生産量指数は37.1%減となった。これは節電の一環で強制的な減産を余議なくされたためである。

2010 年の自動車販売台数は12 万台で、国産車10 万9,240 台,輸入車1 万5,962 台であった。

2007 年には49 万台を売り上げているから実に74.5%減少である。外車については95.3%減と事実上輸入禁止に近い扱いとなっていることが分かる。

原油価格の上昇により外貨収入は増えたが,企業の外貨割当は前年比8.5%増にとどまった。

今後の成長分野は住宅関連であろう。ベネズエラでは200 万戸以上の住宅が不足している。さらに2010 年末からの大雨洪水で多くの国民(特に貧困層)が住居を失った。チャベス大統領は,今後7年間で200 万戸を建設するプロジェクトを打ち出している。

 

2.対外収支

10年の輸出総額(FOB) は670億ドルで、前年比14.2%の伸びを示した。輸出金額の94.7%を石油部門が占める、極端なモノカルチャー構造を示している。一方輸入総額は0.4%の伸びに留まっている。結果として貿易黒字は前年比42%の伸びを示している。

原油価格は08年前半に120ドルまで高騰した後、リーマンショックで50ドルまで下落し、その後75ドル前後で推移している。この関係で輸入を相当制限したものと思われる。結果的にはこれがインフレの亢進と生産停滞を招いていると見るべきであろう。

輸入総額が前年並みに留まる一方、政府による輸入の割合は輸入総額の24%から34%へ急増している。逆に言えば非政府輸入はその分だけ減っていることになる。貿易への政府の統制が強まっていることを表している。

ベネズエラは「21 世紀型社会主義化」を進めている。大土地所有制に基づく農地や一部民間企業の国有化・接収が行われている。銀行,保険,証券など金融業界でも法制度の見直しが行われた。

これらの施策は民間企業の投資意欲を削ぐ結果となり,対内直接投資額は2年連続でマイナス(資本の流出)となった。

外貨準備高はしばしば適正水準である280 億ドルを割り込む事態が生じ,近年では最も低いレベルで推移している。

これにはからくりがあり、国家開発基金(FONDEN)という会計に外貨を集中させているからである。日本で言えば財政投融資会計である。

ただ財政民主主義の立場から言うと、第二会計の肥大化はあまり健全とはいえないと思うが。


私の感想

アジ研のレポートと論調は共通するが、それよりだいぶ品は良い。データも基本的には揃えてある。

まずはチャベスというより、こういう石油オンリーの国では政府の強い経済介入が必須であることを認識しなければならない。

http://livedoor.blogimg.jp/shosuzki/imgs/7/3/732c8a68.jpg

ベネズエラは30年前の石油ブーム(日本から見ればオイルショック)のときに大々的な設備投資をやって、その借金が貯まり大変な思いをしたことがある。

リーマンショックの後、ほかのラテンアメリカ諸国の景気は回復したのに、ベネズエラだけが立ち直れない、と鬼の首でもとったように言うが、この図を見れば、2010年に強い歳出抑制策をとったのは当たり前の話で、やらないほうがおかしい。

ラテンアメリカ諸国で国民一人当たり所得を見てもあまり意味がない。貧富の差がべらぼうだからである。

資源輸出国だから、基本的には仕事がない。失業が当たり前である。富を配分し、仕事をつくり、国民全体を豊かにするためには公共投資しかない。したがって政府支出が景気と経済成長をもろに規定する。

こういう国と政府をどのように運営すべきだろうか、そういう問いかけを常に自らに課しながら、経済分析をしないと意味がない。

たんなる投資先としてはおよそ魅力のない国だから、その向きの方はご遠慮願ったほうが良いだろう。