ベネズエラ経済の現状と今後の課題」と題するレポートがある。09年12月執筆のものだ。
三菱UFJ調査部の堀江さんという方が書いている。
一読してフムフムとうなづいたが、コピー禁止のため泣く泣く摘要を作り始めた。やっているうちに何か変だぞと感じるようになった。
正面から評価すべき、マクロ指標がきちっと抑えられていないのである。資料の採否が恣意的である。おそらく政府発表、あるいはECLACの統計が使われていないのではないか。

ベネズエラという国は二重の意味で特殊な国である。
まずは石油で食っている国だという特殊性である。GDPの大半を石油関連が占めてしまうので、それだけでは経済指標にならない。原油価格が半分になればGDPも半分になるのである。
第二に、チャベス体制の下で一種の金融鎖国政策がとられていることである。こういう国ではドルは「闇ドル」として流通するしかないし、輸入産品がえらく高くなることも間違いない。そういう面もふくめて基礎生活レベルで見ていかなければならないのである。

経済分析をする上では、最低この二つを抑えておかないと、意味のある分析にはならないと思う。
そのうえで、堀江さんの提出したデータから私の感じたいくつかのポイントを述べたい。

ベネズエラ型の発展モデルはどのようなもので、どのように進行しているのか。かつてプレビッシュが提唱し、ペロンが試み失敗に終わった「輸入代替」構想の再現に終わる可能性はあるのか。

行政があまりにも多くを背負い過ぎている可能性はないか、市場の役割がスポイルされていない可能性はないか。行政におんぶにだっこ型企業がのさばっている可能性はないか。

21世紀型の社会主義を考える上で、「旧ソ連の誤りを決して再現してはならない」という点が決定的に重要だ。そのことは当局も十分理解していると思うが、そのための保障となるポイントをどう捉えているのか。

もう一つは金融・為替政策だ。そもそも為替固定制度は、02年暮の石油ゼネストで、チャベス政権を打倒しようとした時、アメリカが金融体制の崩壊を狙って売り浴びせをかけたとき、これに対する防衛体制として開始されたものだ。

外貨はうなるほどある。身の程知らずの設備投資をしない限り、海外資金投入の必要はあまりない。しかしそれ以外の理由もふくめ、それなりにグローバル・スタンダードの中に身を置くべきだろう。(今年になって40%の通貨切り下げを行った)

外資導入は外貨準備に合わせて総量を規制すればよいので、著しい内外価格差を生まないような合理的な基準を打ち出すべきではないか。