続いては、「総合エネルギー論入門: 人はどこまで生きながらえるか」(1993年)の結論部分。

「環境容量限界」の図を示した後…
世界のエネルギー消費が地球流体エネルギーに近づき、あるいはこれを超えれば、燃料の如何を問わず、何らかの気象異変を起こす可能性がある。これは太陽のほかに有力な熱源ができたことによるので、この限界線を地球の熱容量限界と呼ぶ。
これとCO限界との関係を見ると、エネルギー問題は少なくとも差し当たっては、資源枯渇の問題というよりも、むしろ地表の容量限界、あるいは地球の環境の壁にあるといえよう。
中略

(原子力問題に関して)
“全体的破滅を避けるという目標は、他のあらゆる目標に優位せねばならない”というアインスタインの原則は、人類にとって最重要かつ緊急な課題である。
換言すれば、“核エネルギーの暴発”による突然の絶滅の可能性を常に意識し、かつ相応な行動を伴わないで“エネルギー”を論ずることはまったくのナンセンスに過ぎない。
いわゆる“原子力の平和利用”も、原子兵器の存在する限り、正常な発展を期することは不可能である。
“エネルギー”に関する著書に、このことを述べたものがほとんど皆無であるために、とくにこれを強調しておきたい。
中略

エネルギー問題解決の方策
エネルギー問題の解決については、省エネルギーをふくめて、石油に代わるべき諸燃料、核分裂・核融合、再生可能エネルギーの利用、宇宙空間よりの電波などが賑やかに論ぜられている。
またその視点としては、産業発展のための開発推進から、“自然(薪の生活)に返れ”という極端なもの、消費の地方分散化をうたう“ソフトエネルギーパス”などが喧伝されている。
ここではグローバルな観点に立って短期・長期の見通しを立てる。その際科学・技術の側の方策としては次のようなものが挙げられる。

①資源・環境の容量限界の性格を明らかにし、それらを具象化する。そのための条件を総合的に検討する。
②限界に近づかないようにすることが肝要であり、そのために省エネルギーを追求する。
③原子力のような階層の異なったエネルギー源を利用しようとする場合は、安全性を徹底的に追求し、廃棄物処理のための万全の方策を立てる。
④在来エネルギー資源の探査・活用とともに、新エネルギー(たとえば遺伝子工学を利用したバイオマスなど)の可能性を広範に探求する。
⑤これらの探求の成果を踏まえて、各種エネルギーをその特徴に応じて、世界的に合理的に配置する。
⑥遠い将来を考えて、宇宙空間・別天体への進出可能性の基礎研究を着実に行う。

以上の基本方策を実施する上では、軍備の撤廃(とくに核兵器)・各種格差の撤廃、“平和で平等な世界の創造”が大きな前提条件となる。