26日のバーナンキ演説について山田俊英記者が解説している。
英語の略称が目白押しで、えらくむずかしいので、分かったなりに紹介する。他紙の解説も勉強して紹介したい。

記者によると、バーナンキ演説の要点は「金融政策では長期的な経済成長を回復させることはできない」ということだ。

バーナンキは「しっかりした経済成長に必要な政策の大半は中央銀行の範囲外にある」と語っている。これはある意味で当然だ。たとえば日本で日銀が経済成長の回復の役割を担うといえば、「何を馬鹿な」ということになる。
それがことアメリカに関しては成り立ってきたということがむしろ不思議な話だ。
これは金交換の停止・プラザ合意・東西対立の終焉から以降、数十年のあいだに「ドル本位制」という架空の王国が築かれ、その基軸通貨・ドルの発行権がアメリカの日銀にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の手に握られてきたからである。

話しは元に戻るが、今回の演説は世界中が注目していた。それはバーナンキが追加的な量的緩和を発表するのではないかという期待からだった。

量的緩和というのはFRBの持つ伝家の宝刀で、連邦債を買うという形をとって、ドルを発行し市場にばら撒く措置である。Quantitative Easing の頭文字をとってQEと呼ばれる。

リーマンショック以来、二度の量的緩和が行われ、とくに去年末から半年をかけ実施された量的緩和がQE2と呼ばれる(私たちが子供の頃、世界最大の客船がクイーン・エリザベス二世号、QE2だった)。

によれば、

FOMC(連邦公開市場委員会)が決定し、FRBは6,000億ドルの米国債の買い入れを行って大量のドルを市場に供給している。世界経済に未曾有の流動性をもたらすインフレ政策は「世紀の大実験」とも言われ、各国の為替、債券、株式の市場に大きな影響が出ている。


円でいえば50兆円ものドル札を何の裏づけもなしに印刷してばら撒いたわけだ。一種の政策インフレである。

結果はどうなったか、少なくとも当初の目標だった経済成長や雇用の改善に関しては効果ゼロだった。副作用はどうなったか、余剰マネーが投機に回り、商品市況が高騰し、新興国でバブルを招くなどの弊害が広がった。

結局ばら撒かれたドルは生産にも輸出にも向けられず、すべて金融界に回ってしまったことになる。有効だったとはとてもいえない。しかし無効だったかといわれるとなんとも応えかねる。しかし3回目をやりたいかと問われれば、とてもそうは思えない。


バーナンキ議長の主張はこうである。
*税制改革、予算編成を通じた景気刺激策、投資の促進策、研究開発の重視、インフラ整備などが基本だ。
*より生産的な経済は、“われわれが直面する二律背反”を和らげるだろう。

“われわれが直面する二律背反”というのが何か、いまひとつ不明だが、「もしQE2をやらなかったとしたら、アメリカと世界はどうなっていただろうか」、という答えのない問いかけが呪縛となっているのかもしれない。

それが「QE3はありません」と言い切れない弱さと、「世界恐慌の引き金を引いた男」にはなりたくないという意地との交錯をしているのではないか。

英フィナンシャル・タイムズはバーナンキ演説を受けて次のように述べている。
「要するに、米経済に必要なのは政治家の助けだということだ」

差し迫る危機はまさにそこにあるわけで、目前には議会共和党、とくに「茶会派」との対決がある。オバマへの好き嫌いではなく、良識派が結集する場面が出てこないと、先行ききわめて危険だと思う。