ウォールストリート・ジャーナルの10日付社説は「米国債格下げで目を覚ます米国民」と題する社説を掲載している。結論から先に言うと、経済混乱をもたらしたのはオバマ政権の責任であり、財政支出の抑制が求められているというものである。「火災警報器を解除しようとするのはやめて火を消す努力を始めたほうがいい」と表現している。

まず、オバマの登場をもたらしたものは何かという点から触れている。

誰もが終わってほしくないと思っていた数年間にわたる信用拡大は2008年に突然、金融危機に発展した。当時、政権の座にあった共和党は何の説明もしなかったため、有権者は危機にあって一番冷静に見えた大統領候補を支持した。

つまり、08年に金融が危機状況にあったことは認める。そして共和党(すなわちWSJの党)が金融危機の発生に責任があること、そして拱手傍観したことも間接的に認めている。
しかし危機打開のためオバマが打った手についてはすべて否認している。

民間の信用バブルの影響からようやく脱しつつあった経済に対し、民主党は何兆ドルもの財政出動を行ない、債務を膨らませた。金融システムが混乱をきたすなか、民主党は金融パニックを引き起こしたとして銀行を厳しく非難し、2000ページにもわたる新たな規則を課した。

ようするに、経済は自らの力で「民間の信用バブルの影響」から抜け出しつつあったのに、オバマは余計なことをしてくれたというのが、議論の根本的な出発点である。

細かいことだが、ここでは論点のちょっとしたすり替えがなされている。前段でははっきりと危機、あるいは金融危機という言葉でリーマン・ショックを捉えている。しかし後段になると、危機という言葉は注意深く避けられている。

このことで株屋たちは自らの責任を糊塗し、茶会党の尻馬に乗って投機資本への規制や金持ち減税の廃止をつぶそうとしているのではないか。危機であれば財政出動は当然だ。銀行屋や株屋を助けたいわけではないが、波及効果を食い止めるためにはやむをえない。そうやって助けてもらったのは誰なのか、挙句に被告人の身で、「余分なことをしてくれた」と嘯くのか。
医療改革や雇用の問題は、それはそれでいろいろあるが、とりあえず関係はない。国債発行額が巨額に達したのは金融危機回避のためなのだから。それが危機だったのか、ちょっとした混乱に過ぎなかったのかの判断が一番のキーポイントだ。

なおことのついでに、日本にも触れている。

債務負担が増え続けても国民が何も言わず、政治家の決まり文句を受け入れている方がはるかに心配だ。日本はそんなふうに20年にもわたる停滞を甘受してきた。

これはまったく原因と結果を取り違えている。こう言うべきだ。
日本は財界と政治家の決まり文句を受け入れて、そんなふうに20年にもわたる停滞を何も言わずに甘受してきた。そのために債務負担が増え続けてきた。

こうやって見ると、連中の論理のトリックがよく分かる。