妻の病気が進行してきて、車椅子が必要になってきた。いろいろカタログを見せられるが、どうも乗る人の立場に立った発想で作られているものが多いようだ。
最近はパラリンピックとかいろいろあって、障害者が車椅子を乗り回してハンディを克服していくことが美しく語られるようだ。電動車いすで颯爽と町を行く障害者の姿も見かけるようになった。
しかし私たちは老老介護であり、そんなイメージで車椅子を語られても戸惑うばかりだ。妻は宣伝文句にうっとりとして、車椅子さえあれば自分もあのようになれるような幻想に駆られている。むろん、夢を見ることはいいことだとレーニンも言っている。
ここは二段階論で説得するしかない。まずは介護者に優しい軽量小型の車椅子を購入する。そして「これはつなぎだ」といって、妻が望む車椅子の購入をできるだけ遅らせる。その分妻は長く夢を見られる。買えばたちまちにして幻滅することは疑いないからだ。
これは二段階論というより二枚舌だ。だんだん菅首相の発想に似てきた自分が恐ろしい。しかし間違っても米倉経団連会長の発想にはならないぞ。