日本語には非常に翻訳しにくい言葉がある。それも和言葉ではなく、漢字熟語に多い。
われわれの関係する言葉でいうと、「医療」、「療養」、「技術」などがその典型だ。
医療は、医療問題ならmedical issue, 医療機関ならmedical institutes とかなるが、「医療とはなにか」といわれるとなんとも困ってしまう。
技術も、技術革新ならtechnological evolution とか言えるが、「技術とは」と問われると、うまい訳語がない。technology はどう見ても技術学、工学であって「技術そのもの」ではない。
療養に至っては、そもそも概念がなかったから、「結核療養所」の療養を借りてきた一種の造語だ。
これを英訳しようとしたときは非常に困った。とりあえずself-treatment としてみたがきわめて落ち着きが悪い。
療養所がsanatorium だからsanitate にしようかとも思ったが、これは「保清」などの訳語がかなり定着している。cure が一般的だろうと思うが、看護婦さんが大夫手垢をつけてしまって、cure とcare などと頻用している。この場合cure は治療あるいは診療ということになり、care つまり看護あるいは介護と対立概念に絞り込まれている。
癒しとかヒーリングという言葉が最近はやっている。自分で治すという感じが出ていて使えると思ったが、どうも傷口を治す意味に限定されている言葉のようだ。それから発展して、心のササクれを癒す意味にも使われているようだ。
いろいろ辞書を見ていたらremedy という言葉にあたった。おなじ治療でも民間療法に近いイメージがある。病者の側の主体性がかなり強く響く。また治療だけでなく、状況に適合していく、足らざるを補う(compensate)というニュアンスもあるようだ。
語源上は元に戻るというらしい。
キューバにレメディオスという町があったが、こちらは復活という意味だと聞いた。田舎だが良い町だった。街角で買ったローストビーフのサンドウィッチがうまかった。横にご機嫌な58年製の赤のビュイックがいて、なぜかアンちゃんがえらく愛想良かった。
ということで、「療養」をremedy 、療養権をremedying rights と訳すことにした。なおright to remedy は補償請求権という法律用語となっているようなので、そちらは使わない。

療養権の考察 (日本語 英語