材料が少なく、感想的な意見である。
 第一にオジャンタ・ウマラの勝利は、左からも右からも極めてクールに受け止められている。選挙についての論評をネットで探したが、少なくとも英語の文章は皆無と言ってよい。「来るべきものが来た」という感じなのだろうと思う。ことに決選投票にすら自派の候補を送り込めなかった伝統的右翼の無力感は察するに余りある。
 第二に、意外なほどの僅差の勝利であった。ケイコ・フジモリが意外なほどあっさりと敗北を認めたため事なきを得たが、これまでのラテンアメリカの伝統から言えば「不正選挙」と騒いでもなんの不思議もない票差である。
 第三に、選挙の過程で党派関係が捻じれ、国政の争点がぼけてしまったことである。一般には革新のウマラ対右翼のケイコという構図なのだが、実は右翼の中に反フジモリ感情は根強い。そして伝統的左翼はと言えば、これも反フジモリなのだ。逆に民衆の中にフジモリ支持層は分厚い。
 ケイコを支えるべき右翼の中からも多くの造反が出た。ノーベル文学賞を受賞したバルガス・リョサはフジモリが当選した時の対立候補で、フジモリを毛嫌いしている。彼は「エイズよりもガンを選ぶ」としてウマラへの投票を選択した。 フジモリの後に大統領を務めたネオリベラリズムの信奉者トレドもウマラ支持を明らかにし、ウマラ陣営に自らの政治スタッフを送り込んだ。
 選挙戦で劣勢に追い込まれたウマラは、反フジモリを前面に押し立てることによって辛うじて勝利をモノにすることができたのだが、これが今後の政策展開の上で足かせとならないだろうか。気がかりではある。
 かつてチャベスがクーデター未遂事件を起こしたあと政界に登場したとき、フジモリ派の装いをとっていた。実は彼は紛れもない左翼であったことが後から明らかになるのだが、ウマラの思想的経歴にはチャベスのような左翼的傾向は明確ではない。
 目下のペルーの経済情勢を見ると、政策選択の幅はそれほど大きいとは言えない。オマラがエクアドルのグティエレス元大統領のような経過を取る可能性も絶無とは言えないのである。

 第4には、これからの中南米を見ていく上で大事なことだと思うが、この選挙が「上り坂の経済」を背景に行われた選挙だということである。これまでの革新候補の勝利は、どちらかといえば「絶望の10年」の末に国民が選び取った選択だった。それに対しこのたびの選挙は、好調な経済を背景に、「これからさらにどう進んでいくべきか」を問う選挙だった。
 そういう点では、戦いの勝利者はウマラというよりUNASUR(南米諸国連合)だったというほうが正しいかもしれない。ということで、これまでちょっと敬遠してきたUNASURの勉強に着手するか。