戦争責任論の系譜

1945年

1946年 

伊丹万作「戦争責任者の問題」。「だまされた」と敗戦を了解する日本人の、「だまされる」ような自主性のなさの責任を指摘。

南原繁、貴族院本会議で演説。天皇の道義的責任を指摘して、その退位を主張。

1947年

1948年

大熊信行『国家悪』。国家が強制力を持って戦争犯罪の実行を迫っても、個人は普遍的人類的規範に立脚してそれを拒否しなければならない。

1949年

丸山真男「軍国支配者の精神形態」。本の政治指導者の主体性のなさと日本政治の「無責任の体系」を指摘。

1950年

1951年

1952年

1953年

戒能通孝「極東裁判」。第二次世界大戦は世界の民主主義勢力のファシズム諸国に対する戦争であり、東京裁判はその戦争の一部であった。

1955年 

遠山茂樹・今井清一・藤原彰『昭和史』。逆コースの中で氾濫した旧軍人らによって書かれた「戦記もの」の無反省さを批判。一方で、共産党を戦時下で抵抗する国民の極点として位置づける。

1956年

丸山真男「戦争責任論の盲点」。共産党の戦争責任(戦争を阻止できなかった前衛党としての政治責任)を追及。

1957年

亀井勝一郎(『現代史の課題』。松田道雄(『現代史の診断』。ともに共産党系の「昭和史」を批判。いわゆる『昭和史』論争となる。

『三光』が発行される。中国において戦犯として裁かれ釈放された日本軍人の告白を記したもの。

1958年

五味川純平『人間の条件』がベストセラーとなる(第1巻発行は56年)。中国での日本軍の残虐行為の事実が広く知られるようになる。

1959年

吉本隆明・武井昭夫『文学者の戦争責任』。民主主義文学者に、戦時中に戦争協力の事実があったことを暴露。

思想の科学研究会編『共同研究転向』の刊行が始まる(62年まで三巻が発行)。知識人の転向を独自の課題として検討。

1960年

竹内好「戦争責任について」。中国に対する戦争責任の自覚を通しての日本人のナショナルな主体性の創出を提起する。

1961年

『文学』の特集「戦争下の文学・芸術」(全3回)。情報局、戦時下の文学者と文学団体、映画・演劇・歌曲などに関し、戦争動員と戦争協力の諸相を掘り起こす。

1967年

玉城素『民族的責任の思想』。朝鮮における植民地支配の責任を問う。

1968年

1971年 

尾崎秀樹『旧植民地文学の研究』。日本人文学者や朝鮮人・中国人文学者と戦争や植民地支配との複雑な関係を論じる。

1972年

洞富雄『南京事件』。膨大な資料を踏まえて南京事件の実態に迫る。

本多勝一『中国の日本軍』。南京事件など日本軍の残虐行為に関する中国での聞き取りに基づく。

奥崎謙三『ヤマザキ、天皇を撃て!』。飢餓の南方戦線を体験した元兵士の手記。

1973年

高杉晋吾『日本医療の原罪』。細菌戦部隊であり捕虜の人体実験をおこなった七三一部隊について明らかにする。

1975年

井上清『天皇の戦争責任』。『木戸幸一日記』『杉山メモ』などこの時期に公刊された新資料を駆使し、天皇の戦争責任を問う。

江口圭一『日本帝国主義史論』。満州事変期の排外主義の形成を説明して、拝外主義に走ったジャーナリズムと国民の責任を論じる。

1978年

藤原彰『天皇制と軍隊』。天皇制国家機構の機構的特質をふまえて、天皇を含む宮中グループの特質と責任を明らかにする。戦後の「常識」は天皇に政治的・軍事的実権がなかったとされてきたが、これを実証的にうち破る。また「穏健派」とされていた宮中人脈の戦争責任があらためて問われる。

武田清子『天皇観の相剋』。敗戦前後の時期の連合諸国からの天皇と天皇制への厳しい眼と、天皇と天皇制の処遇をめぐっての対抗を、キリスト者の立場から紹介。

1981年

森村誠一『悪魔の飽食』。常石敬一『消えた細菌戦部隊』。七三一部隊の存在が広く一般にも知られるようになる。

1982年

歴史教科書問題が発生。教科書原稿で日本の「侵略」と書かれていた記述を、文部省が検定によって「進出」と書き直すことを強要した。家永訴訟はすでに65年に開始されていた。

洞富雄らによって南京事件調査研究会がつくられる。

1984年

細谷千博ほか編『国際シンポジウム「東京裁判を問う」』。東京裁判に対する肯定・否定のさまざまな議論を集大成する。

1985年

大沼保昭『東京裁判から戦後責任の思想へ』。東京裁判の意義と残された課題について論じる。

吉田裕『天皇の軍隊と南京事件』。南京事件調査研究会の成果をまとめたもの。いっぽうで田中正明らの南京事件否定論が登場。

1987年

朝日新聞テーマ談話室編『戦争』。加害体験の投稿が多く含まれる。

1988年

江口圭一『日中アヘン戦争』。日本の阿片密輸・密売を追及。

1989年

粟屋憲太郎『東京裁判論』。東京裁判における被告の選定過程などの究明を行う。

井口和起ほか編『南京事件京都師団関係資料集』。南京事件を記録した日本軍の兵士・下士官の当時の日記や手記を収集・公刊。


この年表は下記の論文の梗概にすぎない。

赤澤史朗 「戦後日本の戦争責任論の動向」 立命館法学 2000年6号

引用しておいて言うのもなんだが、文章そのものがやや関心領域が広すぎて、「開戦責任」に集中できないキライがある。

とりあえず、アップしておく。