フルヴェングラーのモルダウ

1951年にウィーンフィルを振った演奏がYouTubeで聞ける。

テンポを遅くとって管楽器にたっぷり歌わせている。中間部はまるでローエングリーンを聞いているようだ。

51年の録音なのにどうして? というほどに音はひどい。元の音がひどいのか録音技師が勝手に音をいじったのか、とにかくひどいが、演奏はすごい。

本当はこう鳴っているんだろうなと想像しつつ聴きこむと、さすがにすごい迫力だ。

ただどうしても、私はフルヴェングラーを純粋に音楽として聞き通せない。何年にどこで録音した演奏で、その時フルトヴェングラーは何をしていたのかということが念頭に来てしまう。

Michel Orsoni さんという人がコメントしているのを引用する。

フルヴェングラーは「我が祖国」をコンサートの冒頭に演奏した。それは1940年11月7日、プラハでのことだった。(この録音の10年前)
1940年その時、プラハはナチに占領された。
スメタナの「我が祖国」はチェコ民衆の独立のシンボルとなった作品である。
彼の演奏はナチ占領という恐ろしい状況における、彼の民衆への支持表明の一つの方法だった。

私にはその逆にしか思えない。ナチの勝利したプラハに乗り込んだナチの御用演奏家が、これみよがしに「我が祖国」を演奏すれば、チェコの民衆がそれをどう思うかは、火を見るより明らかではないか。

私はフルトヴェングラーをこういう言い方までして褒めそやすフリーク共の神経が理解できない。