京都大学の木下専助教授らが分かりやすい図を作ってくれている。「パーキンソン病の病態に迫る」というプレスリリースで、素人向けの簡単な解説だ。

パーキンソン病というのは、平ったく言うと、中脳にある黒質という神経細胞集団が衰えてしまうために、運動能力が落ちてしまう病気だ。

中脳の黒質は「運動せえ」という命令を出す。この命令は神経線維を伝わって大脳基底核の線条体というところに達する。そこで大脳の処理も加えて全身に命令を送り出す。

この際命令を伝えるメッセンジャーとなるのはドパミンという物質で、これが枯渇してくると(1割位と言われる)、命令が伝わらなくなってしまう。これがパーキンソン病だ。

昔、私が学生の頃はこの黒質→線条体経路は錐体外路系と言って、なにかアクセサリーみたいな扱いを受けていたが、そんなものは嘘っぱちだということが分かってきた。三位一体を説くマクリーンの呪いのひとつだったのだ。

私の「3脳セオリー」にもとづけば、中脳こそが運動に関わる生物進化の王道であり、他の経路はバイパスにすぎない。ただ5感の中で視覚だけが飛び抜けて発達するようになると、どうしても視覚による補正を受けなくてはならなくなるので、行動の当否を評価するシステムの介在が必要になったのだと思われる。

話を戻す。

この黒質の神経細胞の中にシヌクレインが溜まってくる。そして他のタンパクを巻き込んでレビー小体という封入体が出来上がる。このレビー小体が直接悪さをしているのかどうかは分からないが、とにかくそれが増えるに従ってドパミンの分泌が落ちてくる。

それを図示したのが下の図だ。

病態モデル

シヌクレインというのはAβ(アミロイドβタンパク)と違って本来は悪者ではなく、脳に必要な蛋白らしい。それが何かの都合で変性してしまうと細胞死に繋がる。中には編成したシヌクレインを取り込んだまま生き延びている神経細胞もあって、それがレビー小体として表現されている、というのがこの図のあらましである。

木下先生たちは、シヌクレインが編成するのにはSept4というもう一つのタンパクが関係するようだということを主張しているのだが、それはとりあえず置いておこう。

なおこの文章の下には簡単な用語解説がついていて便利だ。これも転載しておく。

(注2)α-シヌクレイン:
 神経終末に大量に存在する機能未知の蛋白質で、レビー小体の主成分として知られている。遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子産物の1つである。

(注3)レビー小体:
 パーキンソン病などにおいて神経細胞内に形成される封入体で、なかでも黒質ドパミン神経細胞内に形成されるものは円形で均一、同心円状の芯を持つ。変性したα-シヌクレインを主成分とし、副成分として複数の蛋白質を含む。

(注4)シヌクレイン病に分類される疾患群:
 パーキンソン病の大部分、レビー小体型認知症、多系統萎縮症の一部

(注5)ドパミン神経細胞 (ドパミンニューロン):
 ドパミンを神経伝達物質とする神経細胞。細胞体は中脳腹側部(黒質)に存在し、線条体や大脳皮質などに投射した神経終末からドパミンを放出する。パーキンソン病においては、ドパミン神経細胞の選択的な機能障害や細胞死が起こる。

(注6)セプチン:
 細胞骨格系を構成する一群の蛋白質。アクチンやチューブリンなどの細胞骨格蛋白質と協調して、細胞分裂や細胞形態形成に関与する。ヒトのセプチン遺伝子Sept1-Sept13に由来するセプチンのほとんどは脳に多く含まれる。