長谷部恭男さん(憲法学者)

赤旗で紹介された、東京新聞9月18日の長谷部恭男さんの主張が、まだ閲覧可能だ。

【言わねばならないこと】<特別編>憲法 踏み外していないか 憲法学者・長谷部恭男氏

消えた時のために要旨を紹介しておく。

「従来の憲法解釈の基本的論理は維持されている」という政府の主張には問題点がある。

1.1972年の政府見解は、個別的自衛権の行使が認められることを根拠づけている。しかし「日本の国の存立が脅かされ、国民の生命、幸福追求の権利が根底から覆される」事態がその前提となっている。例えば尖閣諸島をどこかの国が占拠したとして、それが「日本の国の存立が脅かされる事態」か議論の余地がある。いわんや集団的自衛権行使を正当化できるのか。

2.1959年の砂川判決は、米軍の駐留が憲法九条二項に反しないかが問われた裁判で、集団的自衛権は争点になっていない。だから根拠になるはずがない。

3.「日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している」というのも、具体的説明がない。本当に環境が厳しくなっているなら、米軍をお手伝いするのは愚の骨頂だ。

4.武力行使は限定されるというが、地球の反対側まで行って武力行使できるというのは、どう考えても限定されていない。

5.弾薬の提供や発進準備中の航空機への給油は、明らかに憲法上禁じられてきた他国との武力行使の一体化だ。これについて政府は説明できていない。

6.安倍政権は、内閣法制局長官の人事にまで手を突っ込んだ。政府の憲法解釈を、時の政権が変えられるようになった。立憲主義に対する正面からの挑戦としか言いようがない。

これからどう戦っていくか。最後は政権を変えるしかないと思う。今回の安保法制を廃止する法案を提出して成立させるだけでは駄目で、集団的自衛権行使を容認した閣議決定を「間違っていた」と、元に戻してもらわないといけない。

国会前などの抗議行動に出かけているが、何の組織・団体に動員されたわけでもなく、何万人もの人たちが自発的に集まっている。まだまだあきらめたものではないと思う。集会だけではなくて、次は選挙にも行って、おかしな政権を倒さないといけない。

閣議決定の問題と絡めて政権交代を提唱している。これは時期から見て共産党に先行しているかもしれない。後ろの2フレーズが大事なので、それだけにしようと思ったが、その前の6項目にも説得力があるので合わせて紹介しておく。

内橋克人さん(経済評論家)

さすがジャーナリストらしく鋭いところを付いている。

この経験をいま生かさなければ、野党は小党が乱立する永久野党になってしまいます。…すでに自民党から野党の分断工作が始まっています。それに乗ってはいけません。

つまり現在の政治的危機は、野党という存在にとっても危機なのだということを認識せよということだ。これは今までにない視点だ。その上で以下のように提起する。

政治の劣化に野党は共同の認識を持つべきです。国民連合政府をいかに成功させるかに議会制民主主義の未来がかかっています。

永山茂樹さん(法学者)

現場近くにいた人らしく、その感触を伝えている。

今回の法案審議の過程を見れば、(野党の)連携関係を作る客観的条件は整いつつあると思います。各党がこのような提案を積極的に受け入れることは、民主主義政治における政党のあるべき姿です。

浦田一郎さん(憲法学者)

安保法制廃止に向けては違憲訴訟などの動きも出ていますが、やはり政治部門での決着がなければ根本的な解決にはつながらない。(この道しかない)

さらに言えば、憲法問題をめぐるこれまでの論争も、政治部門での決着を図らないと解決しない。

反対勢力は当面、野党勢力にとどまらざるをえないが、保守層からも民主主義・立憲主義を大切にする流れが強まることを望む。新しい政治はそのようにして生まれるはずだ。

中東現代史の専門家の栗田禎子さん

この間の闘争は市民・若者の運動に励まされる形で諸野党の団結が実現しました。これが運動の流れとするなら、「それをどう引き継ぐのか」という問いかけがなされるし、「国民連合」という提起はそれに対するほとんど唯一の答えだろう。

いま起きているのは憲法と国民に対するクーデターであり、それによって引き起こされた非常事態だ。これに対抗するためには、憲法と民主主義を守るという一点で広範な国民を結集する共闘が必要です。

あちゃらかすようで申し訳ないが、この方は一昔前なら「千葉のローザ」と呼ばれてもおかしくない、ちょっと過激なアジテーターだ。たしかに「一点共闘」とも言えるが、「点」と言うには少々でかい。世界史的立場から言えば確かに「点」であるが、かなりの広がりも深さもある一つの構造を持っている。

翻訳家の池田香代子さん

全国各地での市民の政治的覚醒を受け止めた、政治的なセンス抜群の提案です。

第三次安保闘争とも言われる今の動きの新しさは、無党派の若者を先頭に、市民が非暴力の抵抗権を行使し、運動の出口として選挙による議会制民主主義の回復を指し示したことにあります。

日本の政治土壌はここまで成熟した。民主主義に性根が入ったのです。

今回の「国民連合政府」の呼びかけは、この勢いに形を与えようとする快挙です。

政治的なセンス抜群の文章だ。これは談話ではなく直接の手書きだろう。しかも一度、二度推敲を加えていると思う。

他の人が触れていない点を独自に提起している。

第3次安保闘争という視点 この人は第一次も第二次も知らない世代と思うが、その精神をしっかり継承している。その上で、この闘争の新しさを出口まで含んだ闘争の展望という形で特徴づけている。そこには挫折も転向もない。そのことを以って「日本の政治土壌はここまで成熟した」と表現しているのであろう。