前から心残りの課題がある。それは、脳機能を考える場合に前脳・中脳・後脳の三点セットを出発点とする思想だ。

教科書はあっさりと「前脳が間脳と終脳に分化する」と書いている。その時、なぜ間脳と終脳に分化するのか、それらは何故、前脳起源であるのかは一切触れられない。

そこを明らかにしないと、結局はマクリーンではないかと思う。

ということで、結局ナメクジウオから魚類への脳の進展を明らかにしなければならないと思っていた。

ところが魚類の脳についての記述はほとんどが感覚器の発達との関連ばかりだ。それはそれで大事なのだが、もっと本質的な問題があるだろうと思う。

それは前脳・中脳・後脳の三点セットと、感覚器の発展の合目的的な関連付けだ。

はっきりしているのは後脳の機能で、これは体節感覚の集中点だ。中脳はおそらくは感覚器の獲得した情報の集約点だろうと思う。体節感覚の特殊化したものとして理解できる。

それでは前脳の機能は何か。それは内分泌系情報との関連付けだ。ここで末梢神経からの情報と、体液性の情報が突き合わされる。これによって情動が形成され、それは神経系と体液性経路を通じて全身に伝達される。

これが脳の力動的構造だ。

ここに感覚器、とくに視覚の圧倒的な発達が加わって脳の構造が修飾されていく、こういう筋道を先ずは立てるべきではないか。

終脳という言い方も気に入らない。終脳という言葉は大脳皮質と基底核が出来上がっていく過程のたんなる媒辞としてしか現れない。

その言葉に何か意味があるのか、そのことについて諸文献は何も説明していない。

そもそも大脳基底核と大脳皮質には必然的な前後関係があるのか、発生学的な因果関係があるのか。

とにかくいろんな言葉が前後の脈絡もなく飛び出してくるのにはイライラする。とりあえず魚の脳のレビューから、その糸口を探ってみようと思う。