Trail Dog 0-1 sniffing around 

http://www.site-shara.net/traildog/

という、恐ろしくマニアックなサイトがあってアフガン問題をつぶさにフォローしている。とても読みきれないが、キアニを中心にパキスタンの大体の流れを追ってみる。


07年ムシャラフが大統領に選出された。このときムシャラフはキアニを後任の参謀長に指名している。

これはアメリカとの関連が強いキアニをすえることで、アメリカからの圧力を避けるという思惑もあったようだ。

キアニは就任前から国内のアルカイダ掃討作戦を仕切っていたが、就任後はアメリカの意を受け、作戦を強化した。

以下は07年10月、キアニがムシャラフ政権の下で軍参謀長(それまでムシャラフが兼任)に就任したときの記事。http://okigunnji.com/002/post_127.html

キヤニ大将は、タリバーン、アルカーイダとパキスタンの戦いの最前線に立ち、政治面でムシャラフ大統領を補佐してきた方です。八十年代と九十年代のブット政権では、二度にわたり大統領の副軍事補佐官を務めています。
今回の大統領選挙に当たっても、ブット女史といろいろ協議したようです。
「今回の選挙でムシャラフ氏が当選した最大の要因はキアニ中将の存在にある」という人もいます。

北西辺境州におけるタリバーン・アルカーイダ掃討作戦を通じて米国とパキスタンの接点となってきた方でもあり、米とパキスタンの良好な関係を作ってきたキーマンでもあります。


しかし当初は作戦が成功したように見えたものの、やがて戦闘はこう着状態に入り、出費は重くのしかかってきた。

一方では、パキスタン軍が多国籍軍の代理戦争を押し付けられた形になり、一方ではその戦争を支援するというかたちで多国籍軍の攻撃参加が押し付けられた。


08年9月、米国のマイケル・マレン統合参謀本部議長は、パキスタン領内の武装勢力の潜伏地域を攻撃する新戦略を明らかにした。

これはパキスタンの主権に対するあからさまな侵犯だ。キアニは多国籍軍の越境攻撃を非難し、「主権は死守されなければならない」と宣言した。

そもそも何のための戦争かといえば、アルカイダを駆逐するためだ。タリバンはアルカイダをかくまったというだけの話。気に入らないといっても抹殺する理由はない。

そこで、キアニはタリバンとアフガン政府の和平を実現することで、アルカイダの孤立を図ろうとした。

10年の6月、キアニはアフガンのカルザイ大統領と会談した。そして、タリバンの有力な一派で、“長い間パキスタンの盟友だった”ハッカーニの組織を政府内に取り込むように説得している。ハッカーニはアルカイダとの関係を断つ準備ができているとも語った。

キアニは同時にアメリカにもタリバンとの和解を持ちかけた。これはブッシュからオバマへの交代が和平の活発化に結びつくことを期待してのものだった。

しかし当初、提案を歓迎するかのようなポーズを示したオバマ政権に対し、米軍制服組が強烈に逆ねじを食わせた。

たしかにタリバン穏健派などという天使のような集団が存在する筈はない。強引に「天使」に仕立て上げようというだけの話だ。


11年9月、「天使」たちがしびれを切らして行動を起こした。ハッカニ・グループがカブールの米国大使館などをロケット弾で攻撃したのだ。

米国は激怒した。ムンター駐パキスタン大使は、「ハッカニグループとパキスタン政府との関係についての証拠がある」と吼えた。

マレン統合参謀本部議長は議会で、「パキスタン軍の情報機関ISIがハッカニを支援している」と証言した。米議会では、対パキスタン援助の全面停止論も持ち出された。

キアニは、「パキスタンがハッカニ・グループと関係があるとの発言は、事実に基づいておらず、とても残念」としらを切った。


アメリカの怖いのは、ただちに行動に移すことだ。

同じ9月には、ザルダリ政権がパキスタン軍によるクーデター阻止などを米軍首脳に要請したとされるメモ疑惑が発覚した。

クーデター阻止の要請というのは、米軍の侵攻を要請するということだ。

現に、5月に米コマンド部隊がパキスタン領内に侵入し、潜伏中のオサマ・ビン・ラディンを殺害したのは、侵略行為そのものだ。

降下先がキアニの家であったとしても何の不思議もない話である。


キアニはこのメモ疑惑で完全にプッツンした。

状況は破滅的だ。アフガン国境地帯で領土侵犯は日常茶飯事に行われている。それは下記の記事を見ても明らかだ。

パキスタン軍の報道官は、この3年間でNATO軍の攻撃により、パキスタンの兵士72名が死亡し、他250名が負傷したとしています。当局は、「これらの攻撃が故意によるものではなかった、とする言い訳は、一切認めない」と語りました。


今年1月、最高裁のチョードリー長官は、ザルダリ政権の要であるギラニ首相に出廷するよう命じた。最高裁といったってそんな権力があるわけではない。ザルダリ政権を縛りつけるためのキアニの差し金である。

「合法的」な装いをとってはいるものの、事実上のクーデターに近い効果を持っていると見てよい。

その上で、キアニは活発に動き始めた。温家宝首相と北京で会談、温家宝は「パキスタン政府と軍、人民が団結して努力し、困難に打ち勝つことができると信じている」と述べた。

そういう流れの上で、今回の対インド姿勢の転換がある。中国・インドとの関係を強化することで国の主権を守ろうとする路線が見えてきた。

問題は、この路線を国民が支持するか否かだが、過去の選挙で見る限り、軍政への嫌悪感が充満していることも間違いない。

この状況は、一見、パナマのノリエガ政権の末期にも似ている。しかしキアニはもっとまじめな男だと思う。

サイはすでに投げられた。行方を見守ろう。