Fukui Shimbun Online

 大飯原発の地元の福井新聞が意欲的な特集を連発している。本文を見ていただければよいのだが、私なりにまとめてみる。

18日の特集は「規制庁なしの原発再稼動に懸念 保安院、安全委員会の旧体制存続」と題されている。

規制庁が再稼動をめぐる議論の一つの焦点として浮上していることを意識したものだ。

ひとつは、地元の意見として、原子力安全規制の機関を確立することを、協力の前提として突きつけられたことである。福井新聞の報道から。

福井県敦賀市の河瀬一治市長は9日、全国原子力発電所所在市町村協議会長として原子力規制庁の早期発足などを国に要請した。自らの姿勢は「規制庁が立ち上がらないと再稼働の議論の土俵には乗れない」とさらに厳しい。

もうひとつは、安全委の班目春樹委員長の発言だ。業界紙の電気新聞は、19日の紙面で「再稼働、見えぬ“大飯後” 原子力安全委がネックに」と報道している。

政府は当初、大飯3、4号機、伊方3号機の3基を先行プラントと位置付け、再稼働に向けた審査を進めてきた。 保安院は大飯3、4号機に続き、伊方3号機のストレステストの審査を終えており、本来なら今月にも伊方3号機に関する安全委の安全確認が始まるはずだった。

しかし安全委の班目春樹委員長は今月5日の会見で、原子力規制庁の発足時期がみえず、十分な検証時間を確保できる保証がないことなどを理由に審議入りに否定的な見解を表明。 安全委がボトルネックとなり、事実上、再稼働プロセスが停止している状況だ。

いわば「規制庁」を人質にしたわけだ。やるじゃないか、班目君。

そこで原子力規制庁設置をめぐる経過。福井新聞から拾ってみる。

わかさ東商工会の野瀬成夫会長は「保安院の説明を住民はあまり信用できなくなっている」と立地地域の不安を代弁する。安全規制を担う保安院が原発を推進する経産省の傘下にある体制は、従来も疑問視されていた。昨年6月、保安院は緊急安全対策と過酷事故対策のみで安全上支障がないと説明。再稼働ありきのような姿勢に、県会からは「ブレーキのはずがアクセルだった」と批判が相次いだ。

政府は、新たな規制組織として環境省の外局にする方針だが、関連法案はいまだ国会で審議に入っておらず、4月1日を目指していた発足は大幅にずれ込む見通し。再編されるはずだった経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会がずるずる存続している。

私も不勉強で、もうとうに保安院は環境庁に移っていたと思ったが、まだ審議にも入っていないというのには驚いた。このほか国会でたなざらしとなっている関連法案には、原発運転期間の原則40年制限や、最新知見を既存原発に反映させるバックフィット制度、過酷事故対策の義務付けを盛った原子炉等規制法も含まれているそうだ。

福井新聞によれば

最大の論点は、新組織の在り方として、政府からの独立性に重きを置くのか、それとも緊急時の政府の指示権、関与を重視するのか、だ。

新聞で判断する限りは、自民党が正しい。

自民党は「政府からのより高い独立性の担保」をもとめている。しかし政府(細野豪志原発事故担当相)は、

「あれだけの事故全体の責任を政治が負わなくてどうするのか」と反論。「内閣の責任の下で適切な危機管理ができる体制が望ましい」と強調した。

これにも一分の理はある。つまりレベルの違う想定の下に議論をしているわけだ。これは議論を通じて解決できる性質の対立だ。少なくともこの対立が原因で審議にすら入れないというのは、両派にまじめさが欠けていることの証明である。

独立性の問題に関して、福井新聞は貴重な提起を行っている。

規制庁準備室が「福島の事故を踏まえ、より現場を重視」と言うように、立地自治体の視点をいかに反映し、住民の安心につなげられるかは、「独立性」以上に大きな課題だ。

もう一つの対立が人事権。福井新聞によれば、

政府案は、環境相が規制庁長官を任命する。一方、自民党案は、規制庁の人事を環境省から独立させる。また、環境省には専門知識の蓄積がないため、多数の職員が保安院から横滑りする見通し。政府は出身省庁に戻さない「ノーリター ン・ルール」を適用する考えだ。

と、ここまでは一致するが、政府が「ノーリター ン・ルール」を一定の役職以上の幹部に限定するのに対し、自民党は全職員を対象にすべきだと主張している。

こんなことが対決点なのかよ! ふざけるな!