草稿集第2巻

要綱Ⅱ 資本の流通過程

 P1~P13

のっけからえらいむずかしい。商品が出来た。それをどう貨幣と交換するかということについての分析である。

まずマルクスは生産過程を価値増殖過程であると同時に価値喪失過程であると書いている。これは当然で、商品作っても売れなければ資本家はすってんてんとなるほかない。マルクスは「資本はいまや商品一般として商品と運命を共にする」とも書いている。

生産過程の外部にある生産過程の諸制限が現れる。

①消費、あるいは消費能力 ある種の使用価値を持つ商品はある限度内でのみ必要とされる。市場が形成されている場合は交換者たちの総欲求によって限度を与えられている。それ以上の商品は使用価値を失う。

②購買能力 その商品と交換できるような商品や貨幣を持っていない人の欲求は「まったく問題となりえない」のだ。マルクスは「生産物は現存する等価物の大きさに、差し当たっては貨幣の大きさによって制限される」と書いている。

この、市場が持つ二つの制限・制限を取り払うために、あらゆる努力が行われるようになる。「それこそが資本主義なのだ」といってもよいくらいの、資本主義的流通システムの特徴になる。

ここまでは、言い方はむずかしいが、言っていることはそれほどむずかしくない。

問題は、この制限が資本主義的流通・交換システムにあっては死活的なものになるということだ。余剰生産物を市場に持っていって売るだけなら、売れなけりゃ持って帰るだけだ。くたびれ損以外の損はしていない。

マルクスは「生産物が再生産され、更新されるためには、その全体がいったん貨幣に転化されなければならない。この点が以前の生産諸段階と異なるところである」と書いている。

ところでこれは、資本主義的生産システムにとっては「居心地のよくない立場」に立たされることになる。生産の場面では、資本は使用価値の中身は問題にせず、価値増殖が果たせればよかったのが、いざ交換という場面では、その生産物の使用価値とその量が問題にされるからである。