むかし、大枚はたいてベートーベン交響曲全集を買った思い出がある。とはいっても安かった。リーダーズダイジェストの通販で7枚組みだったかな?

今でも鮮明に思い出す、箱入りでルネ・レイボウィッツ指揮ロイアル・フィルハーモニー管弦楽団というのだった。音は良かった。ヴィクターのダイナグルーヴ録音だった。ステレオとモノが選べたが、躊躇なくモノにした。安かったし、家にステレオなどなかったからだ。

その割にあまり聞き込んだ記憶がない。おそらく受験勉強に入ってしまってあまり聞く暇がなかったのだろうと思う。どういうわけか高校3年になる頃は結構レコードを買っていた。昭和39年、たぶん家が少し裕福になって、レコードが買える身分になったのだろう。

歯医者というのが儲かる商売だというのは、よその歯医者に行って初めて気がついた。うちが貧乏なのは、歯医者だからではなくて、商売が下手だからだということも分かった。親父は歯医者が嫌いで、「歯医者など屑だ。お前は医者になれ」というのが口癖だった。

右上隅にパンチ穴が開いた安売りレコードがかなり潤沢に出回るようになり、それはレコード屋ではなく古本屋で売っていた。小遣いをもらったら、FONTANAにするか、ERATOにするかが選択肢だったが、まずは穴あきを探すのが学校帰りの日課だった。

いいレコードはまず肉が厚い。ずっしり来る。ミュンヒンガーの「四季」のロンドン盤を買ったときはそれだけで感激した。

その頃、高校の図書館に志鳥栄八郎の「名曲名演鑑賞」という本があって(書名はうろ覚えだが)、私などには手が出ないようなレコードの名前が並んでいた。いわば食堂のお品書きを読んで食べたような気分になったものである。

話は戻るが、レイボウィッツだ。その本で「禿山の一夜」はレイボウィッツが良いと書いてある。たしか「けれんみたっぷりでそれも悪くない」みたいな書き方だった。

それが聞きたかったが、聞けずじまいでいままで来た。それがつい最近、youtubeで聞くことが出来た。この演奏をアップしてくれた人はわざわざモノでうpしてくれている。DレンジもFレンジも低いがその範囲で、良く鳴っている。演奏は「かっこいい」の一言に尽きる。この人、なかなかの指揮者なのではないかとあらためて思う。

そういうケレンミたっぷりの人って結構いる。マルケヴィッチとか、シルヴェストリとか、バルビローリとか… 逆にサバリッシュとかルドルフ・ケンペなんてちっとも面白くない。(クーベリックも同じかと思ったがマーラーはさすがに良い)