東芝の爆弾は「のれん」料とウェスティングハウス

さまざまな記事を見ると、2つのキーワードがあることが分かる。

ひとつは「のれん」料問題であり、もうひとつはウェスティングハウス社(以下WH)問題である。

のれん料問題も元々はWH買収により発生したものだから根は一つということになる。

1.のれん料の問題

まずはのれん料問題から。(毎日新聞 「東芝問題リポート 第三者委報告書が明かさなかった謎」

7月の第三者委員会と社長の共同記者会見で二つの質問が飛び出した。

質問1.社長へ

ウェスチングハウス買収で、東芝の原子力事業の規模は15年に3倍になると言っていた。それが達成できないから、利益水増しを迫ったのではないか。

質問2.第三者委員会へ(youtubeで閲覧可能)

ウェスチングハウスの『のれん』料は、減損の懸念がある。第三者委の調査は、減損処理には関わらないということか。

この質問への第三者委員会の答え

棚卸し資産の評価、固定資産の減損、この中に『のれん』も入ると思うが、繰り延べ税金資産の処理、これらは我々の調査対象外。会社が検討して、監査法人と協議されることだ。

要するに、「損益計算書については調べるが、貸借対照表については知りません」ということだ。

2.貸借対照表の仕掛け

のれん料とか減損処理とか聞きなれない言葉が並ぶ。損益計算書はわかるが、貸借対照表というのはどうも苦手で、今ひとつわかったようなわからないようなところがある。

まずのれん料だが、以下のように説明されている。

『のれん』料: 企業を買収する場合、買収額はその時点の企業価値より高くなる。したがって企業価値だけを資産計上すると、買収額との差額が生じる。会計原則ではこの差額を「のれん」と名付けて、資産計上を認めている。

次に貸借対照表(B/S)について 「東芝の不適切会計問題、貸借対照表(B/S)を見ると理由が分かる?」というブログ記事から勉強させてもらう。

まずがこの表

14年3月期東芝の貸借対照表-min

ブログ主はこの表を見て下記のごとく指摘している。

パッと見て気付くのが「その他資産」の多さ。

総資産6.2兆円の内、約22%に達します。この「その他資産」は環境の変化があれば、一発で資産から消えてしまいます。

その内訳は、「のれん代及びその他無形資産」が1兆円、「長期繰延税金資産」が0.2兆円、「その他」が0.1兆円となっている。

ブログ主はのれん代が1兆円に達した経過をきれいにまとめてくれている。

・2006年3月期      0円
・2007年3月期  7,467億円 (ウェスティングハウスを買収)
・2008年3月期  6,539億円 (ウェスティングハウスの一部株式を売却)
・2009年3月期  6,298億円
・2010年3月期  6,187億円
・2011年3月期  5,592億円
・2012年3月期  7,116億円 (ランディスギア社を買収)
・2013年3月期  9,121億円 (ウェスティングハウス株を買い増し)
・2014年3月期  10,006億円

「のれん代」は、子会社が当初の計画通りの利益を上げられなくなったら減損の必要が生じます。

つまり「見かけだけの資産」であり、むしろ負の資産と考えるほうが正しいということになる。

3.繰延税金資産との連鎖

しかしそれだけなら「消える」だけだが、困るのは後に借金が残ることだ。それが「繰延税金資産」というもので、税金支払分を最初に計上してしまう。利益が出ないと税金支払はなくなるので、この資産は宙に浮いて不良資産化する。

計上している繰延税金資産を守るためには利益計画の達成が必須。利益計画が達成できず→繰延税金資産の取り崩し→債務超過転落→経営破綻、というのが最悪のシナリオです。

ということで、無理してでも利益を出さなければならないという悲惨な状況に追い込まれる。これが今回の粉飾を生んだというのが実相のようだ。

週刊朝日の試算によると最大で9千億円の“損失”になるという。

週刊朝日(7月22日) 「9千億円の“巨額損失”が新たに発生?

この計算は、(のれん代の減損が4千億円)+(繰延税金資産の減額が最大5千億円)=9千億円というもの。

ただ、5千億円というのは11年3月期決算に計上されていた総額で、まるまるということにはならないだろうが。