柳美里さんという作家の文章が、赤旗に連載されている。「南相馬 柳美里が出会う」と題されている。

今日の一節、ひょっこり訪れた唐突感が実にうまく描かれている。
柳さんは今年4月から南相馬に住み始めたのだが、そこに…

その2日後のことです。息子を高校に送り出した後、お弁当の残りをおかずにして朝ごはんを食べていると、庭にヘルメットとマスクで顔がほとんど見えない作業員たちが踏み込んできました。わが家の庭には柵がないので、外から自由に出入りできるのです。
そして彼らはいきなり雨樋の写真を撮りはじめました。パジャマ姿の私は、箸を持ったまま彼らを見上げました。…我が家の4匹の猫たちが伸ばした首を固くして、侵入者である彼らを警戒していました。
「雨樋の写真なんか撮るより、猫の写真撮りたいなぁ」と、作業員の一人が笑いました。
「どうぞ」と反射的に言った自分の声がひどく場違いに響きました。
…「除染作業中」「道路除染作業をしています」の看板や、「農地除染」ののぼり旗のある風景は見慣れたものだったのです。
しかしそれを自分の家の中から見るとなると――、体中の体液が凍りつくような緊張を覚えました。(以下略)

さすがに作家だけあって、文章にまったくむだがない。
夏の夜の怪談ではないが、後から背中にぞ~っとくるものがある。ハンカチ落としでタッチされて、「えっ、オレかい?」という感じかな。

ムダのない文章に無駄なものをつけて、まことに相済まないが、これが「アカの除染」だとすると、にわかに差し迫った問題になる。
ある朝、どこかの担当者がやってきて、家の中外を調べていく。「かわいい猫ちゃんですね」とお愛想の一つも言って帰って行くが、家の玄関には「要除染世帯」のレッテルがべったり貼られている。
そして何事もなしに、その日が暮れていく…

なお柳美里さんはやなぎ・みさとではなく、ゆう・みりと読む。おそらく在日の人だろう。