言語の習得と神経線維のミエリン化

このあいだ、言語の獲得には生体の発達が必要な理由について書いた。

それはブローカ中枢で言葉が形成されて、それを舌や唇で言葉にして発するまでの過程が、関連した筋肉の特殊な発達と、それをシリーズとして連合させるスキルの問題として提示した。

実は、それより以前の過程としてウェルニッケからブローカに至る経路の問題もありそうだ。

聴覚野というのは側頭葉のほぼ中央上部に局在する。その上方には頭頂葉の体性感覚野が広がっている。そして後方にはウェルニッケ野が接している。

詳細はよくわからないのだが、聴覚情報のうち言語刺激はまずウェルニッケで処理される。その後、体性感覚野に送られ、そこから運動野へと伝達され、さらに運動野からブローカ中枢に達するようである。

もちろんその間に思考も入るのだろうが、相当なまわりみちである。シナプスも数回乗り換えるのではないだろうか。

我々がアンデスの先住民と会話するようなもので、日本語を英語に通訳して、それをさらにスペイン語に通訳して、さらにケチュア後に通訳するようなものだ。これでは人とおしゃべりなんかする余裕はない。

ここをスピードアップするには運動野の訓練も必要になるし、通信速度の高速化が必須である。

ホムンクルス

ホムンクルスを見ると分かるように、体性感覚は比較的ベタなのに、運動野は手指と発声に極端に比重が置かれている。これが生得的なものか獲得性の変化かは分からないが、いずれにしてもこの分布が完成するのには生後数年を要するであろう。

もう一つは髄鞘(ミエリン)化の問題である。神経線維には裸髄線維と髄鞘線維がある。生まれてすぐはほとんどが裸髄で、その後にグリア細胞が巻き付いて髄鞘化が進行する。

人間の脳重量は新生児ではわずか400グラム、これが成人になるまでに1300グラムにまで増大する。実に3倍である。

で何が重量増の要因かというと、一つの神経細胞が出す線維の数の増加と髄鞘化である。

髄鞘化の利点は刺激伝達の高速化である。むかしネット通信でADSLというのがあった。同じ電話線を使ってもデジタル化することで通信速度を10倍位に上げることができるようになった。当時としては革命的な技術である。(もっとも今では光ケーブルの導入により過去の遺物と化したが)

これと同じことが髄鞘化(絶縁性能の向上)により達成できるのだ。

この高速化は順次行われるらしく。最初に起こるのは体性感覚野、次が聴覚、そして視覚、それから言語だとされている。(他文献での確認必要)