ということで、私としては挫折したアジア通貨基金構想の再チャレンジみたいなことを期待していたのだが、どうもそのような志を持ったものではなさそうだ。

有り余るドルを手にした中国が、「私も世銀ごっこをしてみたい」と言い出しただけの話のようだ。

それがこのように話が大きくなってしまったのは、世界最大の経済国家となりつつある中国に対し、「バスに乗り遅れるな」的ブームが巻き起こされたに過ぎない。

こう言ってしまうと身も蓋もなくなるが、ブームになった背景というのは、それなりに深刻である。

資金需要と供給の不均衡が深刻化

ひとつの背景として、アジア諸国の旺盛な資金需要に対してアメリカ(と先進国)が応え切れなくなっている状況、それに対する不満が蔓延しつつある状況がある。

人類は投資すべき巨大な富を持っているのに、それらが過剰流動化しているために、あるいは逆に死蔵化されているために、有効利用できないという資本主義の罠にハマっている。

ドル支配体制の矛盾が極限に

もう一つは、一国の通貨にすぎないドルが、国際金融における基軸となっている矛盾がますます激しくなっていることである。通貨面の壁である。

それがすべてとは言えないが、金融面から見れば、通貨発行権を通じてのドル支配が、新経済秩序を打ち立てる上で最大のネックとなっている。

これを打破するには、通貨の多国間スワップ、共通の通貨バケットの形成以外にはないと思う(もちろん各国中銀のガバナビリティ確立が前提ではあるが)

ただ今のところ、残念ながら、ドルの基軸通貨としての優位性は前提としなければならない。したがってリージョナルな共同体を形成するためには、域内主要国の通貨(円あるいは人民元)のドルとの完全な連動性(一切のペグなしの完全変動相場制)が前提となる。

今回のAIIB構想はそれらの困難をすべてスルーしているようにみえる。だからそれはアジア開銀の補助的な役割にとどまるだろうし、中国が胴元になった新たな金貸し銀行が開業したに過ぎない、という結果になるのではないか(それだけでも確かにすごいのだが)


とはいえ、AIIBは米財務省・IMF・世銀のトロイカ体制への鋭い攻撃であり、新自由主義経済に対抗する最初の本格的なアウトサイダーであり、既存の金融秩序を揺るがす可能性を秘めたものである。

短期的に見ても、経済はしばしばマインドで動くことから、これが一つの潮目を形成しないとも限らない。

その政治的意義はきわめて大きいといえよう。