先日の、AALAのシンポジウムで大西先生がアジア開発投資銀行(AIIB)構想を天まで持ち上げた時、私は少なからぬ違和感を抱いた。

97年の東アジア通貨危機がアメリカ主導のもとに収束された時、アジアには決定的にかけているものがあると感じた。それは通貨基金(ファンド)である。

投資資金を主体とするアジア開発銀行だけでは足りない。諸国が金を突っ込んで資金をプールし、それをスワップの形で回せるようにしなければ、アジア開銀だけでは息切れする。

投資(インヴェストメント)を金融(ファイナンス)がバックアップしない限り、投機資本に対抗はできない。

これが何よりも痛切な教訓であろう。

もちろん金融システムの強靭化は避けて通れない課題であり、それ抜きにファンドを語っても仕方ない。しかしいかに優良かつ堅実な投資を行おうと、投機資本に本気になってかかって来られたら勝てない。

関税、投資だけではなく金融(通貨)面での団結が必要なのだ。

中国はこの問題に手を付けるつもりはない。AIIBはアジア開銀の補完物にすぎない。酷評すれば、AIIBは通貨という勘どころを外した政治的イニシアチブに過ぎない。

実際日本はこの構想に着手しようとした。円を事実上の基軸とするアジア通貨基金計画である。しかしそれはIMFと米財務省の激しい攻撃を受けて流産した。国内的にも山一や拓銀の破産など弱点をさらけ出した。(しかし本気でやれば、まだあの時期なら勝てたのではないかと思っている)

「アジア通貨基金」構想は、多角的なスワップを基軸とするチェンマイ・イニシアチブに形を変え、地道に成果を重ねてきた。しかしこの構想を推進した日本は、その後日米同盟強化、ドル集中路線に舵を切り替えた。

この理由はいろいろ考えられるが、日本の支配的な経済団体における国家資本主義的な発想(シェアー重視)の後退が大きいと思っている。

彼らは日本国民と一体となって日本経済の発展(シェアの拡大)を目指すよりは、アメリカの支配層と肩を組み利益の極大化を目指すようになった。

もう一つは、円を支えるべき日本の商業銀行システムの弱体化である。巨大銀行がさらに再編され3つのメガバンクに統合されたが、その支配力に昔日の面影はない。円高は円の強さではなく弱さの反映となった。

結果としてチェンマイ・イニシアチブは停滞した。通貨スワップのネットワークは依然未完成である。

にもかかわらず、私はいまでもチェンマイ・イニシアチブがアジアの開発と経済発展の鍵を握っていると思っている。その再活性化こそがアジア開発の王道なのだ。

アジア開発投資銀行(AIIB)構想は、チェンマイ・イニシアチブが進展しないことへのいらだちの表明であり、裏返せば期待の表現でもあると感じている。