地方ネタといえば地方ネタだが、現場の市長さんが面会を求めたのを、「そんなシステムがない」と門前払いしたのにはびっくりだ。

面会を求めたのは大阪の摂津市長、「おととい来やがれ」と足蹴にしたのはJR東海だ。

そもそもどうして摂津市長がJR東海に面会を求めたか。それは摂津市内の新幹線車両基地での地下水汲み上げに反対するからだ。

鳥飼車両基地
        鳥飼車両基地(ウィキペディア)

そもそも、地下水の汲み上げは摂津市とJR東海との協定により禁止されていた。今回それをJR東海側が一方的に破った。ここに摂津市長の問題意識がある。

事件の背景

摂津市には国鉄時代から車両基地があった。「東海道新幹線鳥飼車両基地」という。広さは甲子園球場9個分、淀川の支流である安威川沿いに帯状に伸びている。

新幹線が開業した1964年から操業を開始しているが、その後の10年に30センチもの地盤沈下が発生した。洗車用に大量の地下水を組み上げたためである。

30センチ下がれば、家は傾くだろう。下手をすれば水道管は破裂し、ガス管は断裂し、下水は逆流する。

そこで摂津市は地下水汲み上げの中止を要請した。国鉄もこれに応じ、77年に市と国鉄の間に「環境保全協定」が締結された。これにより地下水の汲み上げは中止された。

地盤沈下

その結果、地盤沈下はほぼ止まった。ここまでならめでたしめでたしである。

ところが去年の9月、突然JR東海が井戸の掘削を開始したのだから、住民が怒るのも当然だ。

しかもやり方がえげつない。下の地図を見て欲しい。

鳥飼地図

おそらく安威川の旧河道であろう、茨木市が現安威川を越えて鳥飼車両基地にちょっとだけ食い込んでいる。ここに井戸を掘ったのだ。「悪い冗談だ」と思うが、本当の話だ。

「摂津市とは協定を結んでいるが、これは茨木の話であなた方とは関係ない」とでも言うのであろうか。むかしの江川事件を思い出す、まことにえげつない行動である。

なぜこのような事態がまかり通るのか

井戸の掘削は「災害などによる断水に備える目的」と説明されている。しかし、この件について国会で質問した辰巳議員はこう述べている。

あらゆるところでコストカットしていくというのがJR東海の方針だ。井戸水汲み上げで年間1億円の経費削減ができると試算されている。

しかし考えても見よ。地盤沈下で家が住めなくなれば、1戸2千万円50戸としてざっと10億円の被害が出る。宅地価格も暴落するだろう。「それは知りません」ではすまない。

しかしJR東海にはまったく恥じらう気配はない。

市は建設を制止した。JR東海はこの制止を無視した。

市は2ヶ月後に大阪地裁に提訴した。これに市民が呼応した。市議会は全会一致で、「JR東海に対し環境保全協定の順守を求める決議」を採択した。住民署名は3万5千人分を集めた(茨木の人口は8万5千人)。

一言で言って、JR東海と葛西社長は摂津市と摂津市民をなめている。コスト節減というがそれは人さまの資産を抜き取るに等しいわけで、強盗だ。

ヤクザの経営する悪徳土建会社と同じ企業論理が、JR東海にも貫かれていることになる。公共性の強い独占的事業が私的に運営されるとこうなるという悪しき見本だ。