赤旗にシンポジウムの要約が載った。

要約の要約を紹介しておく

緒方さん(共産党副委員長)の発言

東西、あるいは南北という国際関係が変わり、東アジアが経済の中心になろうとしている。

東アジア共同体を展望することまますます重要な政治的・理論的課題となっている。

“ASEAN+3”の枠組み形成から、東アジア首脳会議の「バリ宣言」(11年)の原則確認と流れは形成されつつある。

日本共産党の「北東アジア平和協力構想」: 日米・米韓の軍事同盟を廃棄することを条件としない。「バリ宣言」の内容は、軍事同盟の存在下でも確認・実行が可能だ。

アルムタキさん(インドネシア)の発言

かつて東南アジアは「信頼の欠如」に悩まされた。インドネシアは好戦的な姿勢を取り、地域の不安定の主要な原因となっていた。

しかし(スカルノ→スハルトの政権交代に伴い)、東南アジア諸国の国益増進のためには平和的共同のほうがより効果的であるとの認識に達した。

外交的な懸念に気を取られないで済めば、平和と安定と繁栄のために時間とエネルギーを注ぐことができる。

諸国間の関係を軍事同盟から平和の同盟に変えていく。そのために必要なのは「多国間主義」と「規範に基づくアプローチ」である。

これは平和の共同体への非平和的脅威に対し、対話や外交という平和的手段で対処することを意味する。

共同体的解決というのは、すべての当事者を排除しないということである。

南基正さん(韓国)の発言

1998年から2005年にかけて、東アジア共同体構想の議論は非常に盛り上がった。しかしその後失速してしまった。

東アジア共同体のためには、日本と南北朝鮮との3つの二国間関係が重要であり、日韓関係がその核心となっている。

日韓のあいだに歴史問題が浮上しているが、根本は朝鮮半島における冷戦システムの解体にある。

これを解決するためには、1965年の日韓条約では不十分である。

この条約は韓国が非民主的な体制であった時に、米国の要請に基づいて締結された。

現在、韓国は民主化されており、国民の要求は受け止められなければならないし、米国の強制ではなく自発的な関係が再構築されなければならない。

劉成さん(中国)の発言

中国人と日本人の違いは本質的なものではなく、置かれた歴史的状況に規定されている。相違はたんなる“時間差”だ。

国際問題解決のためには、①ラウンドテーブル方式で、②行政優位で進めていくことが重要だ。

かつて奴隷制がタブーとなり、植民地制がタブーとなったように、戦争をタブー視する日がいつかは来る。

どの国にもそれぞれの夢があるが、平和こそすべての人類の共通の夢なのだ。

大西広さんの発言

東アジアでは、ASEANにおけるインドネシアの役を中国が果たすことになるだろう。それを日本が受け入れられるかどうかが問題だ。

「どう対抗するか」という発想から抜け出せないままでは活路はない。

グエン・バン・フィンさん(ベトナム)の発言

バンドン会議の精神は平和、独立、連帯だ。この精神は非同盟運動に受け継がれてきた。その具体的成果がASEANだ。


さすがに赤旗のまとめは簡潔で要を得ている。私のように細部に拘泥することはない。

ASEANの歴史的位置づけを巡っては、インドネシアとベトナムのあいだに食い違いがある。

インドネシアの総括は非常に具体的で説得力のあるものであるが、やはりベトナムの視点が最初に来るべきだろう。

スカルノはバンドン宣言を発したにもかかわらず、それと矛盾するような行動をとった。それがあらためて原点に立ち返ったところからASEANがスタートしたと見るのが正しいように思う。ただおそらく9.30事件を経験していないアルムタキさんの中では、そのような歴史的認識は断絶している可能性がある。

劉さんの「時間差」論は面白い。私は韓国にも中国にも行っているので、感覚的によく分かる。

韓国は日本に20年位遅れて後を走っている。中国はおそらくそこからさらに20年位遅れているだろう。

富裕層の生活スタイルとか、街の風景とかはいまやほとんど違わなくなった。市民の生活レベルでも、その差は縮まっているかもしれない。

しかし、文化もふくめた「民度」の差はいまだに歴然としている。そういうところも見ながら判断していく必要があると思う。

レセプションの時にお会いした時にも言ったのだが、大西さんは、実にクリアカットな論理で迫るのだが、時に、ちょっとクリアに過ぎるのではないだろうか。そこが良いところでもあるのだが。

アジアインフラ投資銀行についても、とりあえず政治的アドバルーンのようにも思え、私は日経新聞ほどには評価できないでいる。

いまはちょっと“幼児帰り”しているが、やはり日本が政治・経済・文化のどの面をとってももっとも成熟した環境にあり、東アジアの共同を考える上では日本の積極的役割が不可欠だろうと思う。

その辺のダイナミクスは、韓国の南さんがみごとに解き明かしている。国際感覚を身につけるのに、韓国ほど格好のフィールドはあるまい。