「新銀行東京」(通称 石原銀行)がついに消滅するようだ。
東京TYフィナンシャル・グループ(Tは東京都民銀行、Yは八千代銀行)に吸収合併されるらしい。
ちょっと経過をおさらいしておこう。
「新銀行東京」は2004年に設立された。石原慎太郎の鶴の一声で決められた。即断で、既存の「BNP銀行」を公有化する手法で発足した。まさに「石原銀行」と呼ばれる所以である。
鶴の一声というと、鶴には失礼かもしれない。「今回出資する1千億円が、やがて数兆の値になる」と記者会見で豪語したのだが、これはほとんど詐欺師の口上に近い。全国銀行協会には非加盟で、ATMも接続していない。東京都の公金収納取扱金融機関にも指定されていない。
東京都が1千億円を拠出して、05年に営業を開始した。しかし中小企業向け融資が相次いで回収不能となり、わずか3年で累積損失が1260億円に達し(経常収益は260億円)破綻した。当たり前である。自治体が融資をやれば議員や有力者が群がる。これが無担保・無保証となれば、食い物にされるのは火を見るより明らかだ。

この時点で東京都の出資分のうち855億円が毀損された。1年あたり300億円である。金融庁は、元行員の不正融資事件を調査、審査管理体制に関する業務改善命令を行なった。

ここで第二の怪が起きた。「東京発の金融不安を封じ込める」「清算したら巨額の損失が発生する」と称して、都は400億を追加出資した。さらに日銀は独占禁止法を無視して、1千億の低利融資による支援をおこなった。

その後はこれらの資金をもっぱら国債・証券買いにあて、その配当金によりバランスシートの改善を計った。リストラが進められ、大手町の本店をふくむすべての店舗が閉鎖された。従前の新宿出張所のみが残され本店となった。ATMは廃止され、本店にはセブン銀行のATMが設置された。
「間口3間」の小商いに縮小して、ほぼ営業を停止したのだから、それなりにバランスは取れるようになった。しかし収益はたかだか年間60億円である。何もしていないのと同じだ。
Shinginko-tokyo
                まさに間口三間の「本店」
都の出資金(追加もふくめ)はそのまま残され、現在は470億円となっている。これがさらに焦げ付けば毀損総額は1千億をこすのではないだろうか。
都民一人あたり1万円だ。かつて美濃部都政の頃、自民党は「無駄遣いだ、バラマキだ」と攻撃したが、これほどの無駄遣いは許すのか。

不思議なのだが、世間一般の常識にあまりにも背馳していないか。弁済責任はないのか。現に東京都に対し、石原慎太郎と旧経営陣に都の出資金分を返還させるよう求める訴訟も起こされている。当然である。
どうして財界・金融界をふくめて石原指弾の声が上がらないのか。批判はしても結局は他人の金だからウヤムヤにするのだろうか。
メディアはなぜ沈黙を守るのか。私もあまりテレビ見ていないのでわからないのだが、石原慎太郎が「申し訳ございません」と言って頭を下げる場面を見たことがない。
ウィキペディアによると、石原は「設立理念は正しかったが、経営がまずかった」としゃあしゃあと言い抜けているそうだ。
経過については東洋経済オンライン08年4月号の「やはり、おかしい新銀行東京 都民は徹底追及を」が詳しい。