面倒なので委細は省略するが、3倍という数が面白い。

3倍というのは、クロロフィルsを用いた光合成の話で、それまでの色素に比べて一つの過程から3つの電子を取り出すことができるということだ。

最初は硫化物を還元することで一つの電子を得ていた。それが水を原料に使い、太陽光のエネルギーを利用することで、一つの過程から3回にわたり電子を得ることができるようになった。

それまでの生命体がおっつかっつのエネルギーバランスで暮らしていたとすると、必要最低限のエネルギーの2倍の貯金ができることになる。

これが生物界発展の原資となったのだろう。

最低生活費が年間150万円として、収入が一気に450万円になったようなものだ。貯金するもよし、ちょっとした贅沢をするも良し、何かに投資するもよしということだ。

これが300万円だとすると、「ちょっとしたゆとり」を得るためにすべて消費されてしまうだろう。こういう生活はかえって危ない、財政ピンチに陥った時の抵抗力が失われてしまうからだ。

葉緑素は瞬く間に地球上に広がったのだろう。それは第一に硫化物と違い、地球上に普遍的に存在する水を原料とするからである。

第二に光は地球の表面に普遍的に降り注ぐからである。

この結果何が起こったか。

第一に生命の大爆発である。生命の大爆発というのはエネルギーの大集約である。これが貯金だとすれば年利200%の複利だ。そのエネルギーはこれまでは漫然と自然現象の中で消費されていたが、生命体の中に集約されるようになる。

第二に地表での酸素濃度の増加である。これは酸化エネルギーを起動力とする生命体の大発生をもたらす。

第三に、これは結果論であるが、生命体の葉緑素への依存をもたらしている。ほぼすべての生命体がその栄養源を葉緑素に頼り、代謝を酸素に頼り、葉緑素なしでは生きていけないような体系を形作ったのである。

第四に、葉緑素を中核とする代謝システムが確立したことで、生命体は自然に翻弄される生物物理的状態を脱し、自律的な生物学的発展(進化)の途を歩み始めたのである。

ただし、葉緑素の本態が分かれば分かるほど、葉緑素システムからの脱却、葉緑素よりもっと普遍的で、もっと良いエネルギーの捕捉・固定法、酸素の生成法がないかどうか、考えたくなるのも人情である。

とくに人類が地球にとどまらず、宇宙空間へ進出していく際には、この問題は避けて通れない。

核の開発はそれを予感させたが、結局、現在のところは断念せざるを得なくなった。あまりにも生まれ方が悪かった。

次の子供に、次の「3倍化」を期待しよう。その時人間は自らエホバとなるのである。