米・キューバ関係改善を目指すこの間の動き

2014年

12.17 オバマ米大統領、キューバとの国交正常化に乗り出すと発表。

キューバ国民と米国民、そして全半球と世界のために、米国は過去の足かせを緩めることを選ぶ。

米国は長い間キューバの民主化促進を唯一の政策として掲げてきた。アメリカの外交政策で賞味期限が切れたものがあったとすれば、それは対キューバ政策だこれまで失敗してきた時代遅れの手法を終わらせる。
頑なな政策は、私たちのほとんどが生まれる前に起きた出来事に根差すものだ。それは米国人のためにもキューバ人のためにもなっていない。
キューバとの対話を直ちに始めるようケリー国務長官に指示するとともに、キューバの首都ハバナの米大使館を再開する。
ケネディ政権時代から続いてきた渡航禁止、送金規制も緩和する。また原則として禁止してきた、建築資材や携帯電話などの禁輸措置を緩和し、テロ支援国家指定の見直しも検討する。
カナダ政府とローマ法王フランシスコの仲介で、2013年6月から舞台裏の交渉が続けてられていた。
フランシスコ法王は、3月にオバマと会談しキューバを巡って意見交換した。さらに両首脳に書簡を送り、10月にはバチカンで対話の場を提供した。オバマは「ローマ法王の支援で道義的な権威が得られた」と感謝している。

12.17 ラウル・カストロ国家評議会議長もキューバで演説。

オバマ大統領の発表は尊敬と評価に値する。ローマ法王庁の力添え、特にキューバと米国の関係改善に向けたフランシスコ法王の力添えに感謝したい。(全文はここに掲載)

12.17 米国人アラン・グロスが、「人道的」見地から釈放される。20年にわたって拘束されていた米情報要員も釈放される。米国はスパイとして服役していた3人を釈放する。

12.17 共和党の反応。

共和党のベイナー下院議長が「キューバ国民が自由を享受するまでカストロ政権との関係を見直すべきではない」とする声明を発表。
共和党のマルコ・ルビオ上院議員が非難声明を発表。経済制裁の緩和を「理解できない」と批判。あらゆる権限を行使してキューバへの米大使派遣を阻止すると述べる。
ルビオはフロリダ選出で、亡命キューバ人の家系。反共謀略組織CANFの幹部を務める。次期大統領候補の一人と目されている。

12.20 ラウル・カストロ、人民権力全国会議(国会)で演説。「われわれは米国に政治体制の変更を求めてこなかった。米国にもわれわれの政治体制を尊重するように求めていく」と述べる。

12月 国交回復交渉への日本メディアの見解。

歴史に名を残したいオバマ大統領と、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長の思惑が一致

原油価格急落で、キューバの友好国であるベネズエラのデフォルトが現実味を帯び、キューバ経済が厳しさをました。

ウクライナ情勢を受けて米ロ関係が悪化したことから、ロシアとキューバの接近が懸念された。

12月 オバマ大統領、テロ支援国家の指定を見直すようケリー長官に指示。大統領権限の範囲で、貿易や渡航の制限緩和をうちだす。

12月 キューバ、米国の指名した政治犯53人の釈放に同意。さらにインターネット利用の解禁や、赤十字国際委員会、国連人権保護担当官の受け入れも表明。

12月 フロリダ・インターナショナル大学が行った世論調査によると、フロリダ州デイド郡に住むキューバ系米国人の間では禁輸支持は、1991年の87%から現在では48%に低下。(フロリダ州はキューバ系米国人約130万人のの本拠)

2015年

1.20 オバマ大統領が上下両院合同会議で一般教書演説。

われわれのやっていること(キューバ孤立策)は50年間機能しなかった。新しい試みに取り組むときだ。

キューバ政策の変更は西半球での不信の遺産を終わらせる可能性を持っている。ローマ法王フランシスコは「外交は小さな一歩の仕事」と述べた。この「小さな一歩」は、キューバの将来に新たな希望を加えた。

我々はキューバ制裁について偽りの口実を除去し、民主的価値のために立ち上がり、キューバの人々に友情の手を拡げる。

そして今、議会は禁輸を終えるための仕事を開始する必要がある。

1.22 ハバナで次官級協議が行われる。移民問題、大使館開設,人権問題が俎上にあげられる。

1.24 2日間の協議を終え、ジェイコブソン国務次官補が記者会見。

米、キューバは、両国の意見の隔たりを埋めるべく取り組んでいる。表現の自由や人権について、今回の協議の一部として話し合った。
オバマ大統領も、テロ支援国家指定と経済封鎖の解除の2つの問題を認識している。

4.04 オバマ、ニューヨーク・タイムズのインタビューで、自らの「関与政策」を説明。強大な軍事力を背景に、軍事力を使用することなく、外交で解決の可能性を探ると語る。

4.11 パナマで第7回米州首脳会議が開かれる。キューバが53年ぶりに参加。両国首脳が非公式に会談。

オバマの演説は以下のとおり

米国はキューバとの関係で新たな章に入った。この政策転換は南北の米大陸全体にとっても重要な転換点となる。
米州首脳会議にキューバを参加できるようにしてくれた米州機構諸国に感謝している。
キューバと違いは残っているが、話し合いは前進している。米国はキューバと新しい関係の構築を目指すとともに、キューバに人権問題の前進を求める。

4.11 オバマ、会議終了後パナマを発つ際の記者会見。

米国はキューバの民主化を諦めていない。民主主義、人権、結社の自由ならびに報道の自由といった問題について話し合うことをやめることはない。社会がどのように構成されるべきかについては、さまざまな考えがあるが、私はラウルと密に話をしている。

米国は完璧である、という主張はしない。
確かに過去の不満について話し合う時間は十分にあり、国内で発生している政治的な問題の言い訳として米国を利用することもできるだろう。
しかし、それでは進展は期待できない。
それによって、字を読めない、十分な食糧を得られない子どもたちの問題を解決できるわけではないし、われわれがより生産的になり、競争力を得られるというわけでもない。

4.14 オバマ米大統領、キューバへのテロ支援国家指定を解除することを承認し、議会に通告する。これにより経済制裁も緩和される。

テロ国家指定解除の仕組み: オバマの指示に基づき、国務省がテロ支援国家の指定が解除できるかの見直し作業をおこなった。

「情報機関が提供した記録などを慎重に検討」した結果、国務長官は、①過去6カ月の間に国際テロを支援していない、②将来もテロを支援しないと予想される、と判断。
大統領に解除を勧告し、オバマ氏がこれを承認した。

この措置は、承認を受け45日後以降に発効する。議会はそれまでに、解除に反対する法案を可決することもできる。
ただ、反対法案が可決されても、大統領は拒否権を行使する。その際、議会は上下両院で3分の2以上の票を集めれば、大統領の判断を覆せる。
世論調査では、米国民の約6割がキューバとの国交正常化に賛成しているため、共和党側もそこまで対決できないのが実情だ。(朝日新聞)

外交政策変更の柱(WSJによる)

1.大使館開設(大使の発令は議会の承認事項のため当面は困難)

2.渡航制限の例外規定の拡大(現在は親族訪問や報道、専門的な研究、貿易業務、医療など12のカテゴリー)

3.米銀発行のクレジットカードおよびデビットカードが使用可能となる。

4.葉巻・ラム酒などの5万円までの持ち込み可。

5.米国からキューバへの送金制限は1四半期当たり500ドルから2000ドルに引き上げられる。送金許可を得る必要はなくなる。

6.インターネット構築のための通信機器の対キューバ輸出が認められる。現在は観光向けホテルを除き一般利用はほぼ不可能。

4月 米州首脳会談に対するラテンアメリカの評価: ブラジルのルセフ大統領は13年の盗聴問題発覚以降中止していた米国訪問を行うと発表。ベネズエラのマドゥロ大統領も言葉を交わす。メキシコのウニベルサル紙は「米州における新時代」との見出しを掲げる。

5.01 岸田外相は3日間にわたりキューバに滞在。ロドリゲス外相や、外国との貿易などを担当するカブリサス閣僚評議会副議長などと会談。